天才ギタリストがシンセを手にして作り上げた名盤 VAN HALEN - 1984

アルバム1984が出来るまで





VAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)の初期の歩みについては、VAN HALEN – 5150の記事で書いているのでそこを参照していただきたいと思います。

 

前作の頃からかEdward Van Halen(エドワード・ヴァン・ヘイレン、通称エディ)はバンドのフロントマンのDavid Lee Roth(デヴィッド・リー・ロス(以下デイヴ))とプロデューサーのテッド・テンプルマンへの譲歩に不満を持っていました。
二人は、エディがキーボードを導入して、バンドの音楽を大きく変えることを阻んでいたのです。
しかしエディは1983年、自宅の裏庭に5150という名の彼自身のレコーディングスタジオを作ります。
そしてこの5150スタジオで、前作DIVER DOWNに続くアルバムの楽曲作りを、デイヴとテンプルマンの干渉を受けることなく行なうことになりました。
その結果として生まれたのが、ハードロックにキーボードが融合した、まさに1980年代の楽曲たちになります。

 

今日は1984年リリースの彼らの6枚目のアルバム1984をご紹介したいと思います。

アルバム1984の楽曲紹介

オープニングを飾るのは1984

 

これは、きっとこれまでのファンが度肝を抜かれたであろう、大変化を象徴する楽曲です。
短い1分ほどのインストゥルメンタルで、何とシンセのみで出来ています。
壮大な雰囲気をシンセだけで表現しているわけです。
美しいメロディは、やはりエディが子供の頃ピアノやクラシック音楽を習っていたことときっと無関係ではないでしょう。
1984年という年に、近未来の香りのする素晴らしいインストをエディは生み出したのです。

 

しかし、ヴァン・ヘイレンのアルバムを買ってレコードに針を落とした瞬間にこれが聞こえてくれば、相当な驚きだったと想像できますね。
えっ、これってヴァン・ヘイレン??
レコードを間違えたのでは??
こんなリアクションも多かったのではないでしょうか。
1stアルバムのERUPTIONで受けた衝撃とはまた別の衝撃です。

 

しかし、この曲はアルバムのイントロダクションであるとともに、次の2曲目の名曲へのイントロダクションでもあったのです。

 

2曲目はJUMP(ジャンプ)。

 

問答無用の80年代を代表する楽曲です。
イントロのシンセによるリフは、シンプルながらインパクトは絶大でした。

 

このシンセによるイントロのアイディアはすでに1981年には出来ていたようですが、デイヴがそれを好まなくってここまで延びたらしいです。
しかし、1983年、プロデューサーのテッド・テンプルマンがデイヴにそのアイディアを聞くよう頼みます。
繰り返し聴くと共に、飛び降り自殺を計ろうとした人のニュースを見て、この曲の詩のアイディアが浮かんだそうです。

 

結果としてその年の暮れには新たなヴァン・ヘイレンの魅力を打ち出した曲としてアルバムの先行シングルとしてリリース。
バンド初のビルボード誌シングルチャートNo.1を獲得するのでした。(それも5週連続です。)
加えて同誌Mainstream Rockチャートでも第1位を獲得しています。

 

この曲のヒットの要因として、シンセによるポップでキャッチーな楽曲、という要素があると思いますが、それに加えて素晴らしいPVによるところも大きいと思います。
デイヴの派手なアクション、エディのシンセプレイの初披露、またエディのギターソロなどが楽しめるこのPVはMTVなどで繰り返しオンエアされました。
まさにMTV時代の大ヒット曲と言えるでしょう。
エディのアイディアは確かに実を結び、キャリア最高の大ヒット曲となったのです。

 

3曲目はPANAMA(パナマ)。

 

これは爽快な疾走チューンになってます。
従来のファンはこのエレキギターのイントロのリフを聴いて、やっと安心できたのではないでしょうか。
激変を遂げた2曲の次には、ついにヴァン・ヘイレンのドライヴィングロックンロールが聴けたわけです。

 

この曲はギターの観点でも聴き所は満載で、多くのギターキッズがコピーしたと思われます。
イントロの最初の8分音符が抜けてるところなんか、すごく彼らのセンスを感じてしまいます。
とにかく底抜けにアメリカンなハードロックを聴きたいなら、この曲に決まりでしょう。

 

これはアルバムからの3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第13位のヒットとなりました。
ちなみにMainstream Rockチャートでは第2位まで上がっています。

 

4曲目はTOP JIMMY(トップ・ジミー)。

 

タッピングハーモニクスの音にうっすらとディレイのかかったイントロが印象的です。
これを余計なノイズなしにコントロールしてしまうエディの才能には脱帽ですね。
そこに歪んだエレキが割り込んでいき、ノリのよいバンドサウンドがスタートします。
ギターソロもいいですが、途中のバッキングにもエディのセンスが詰め込まれています。
曲的には、以前のヴァン・ヘイレンのサウンドと言えるでしょう。

 

5曲目はDROP DEAD LEGS(ドロップ・デッド・レッグス)。

 

どっしりとしたロックソングです。
曲はあまり目立ちませんが、ことエディのギターフレーズに注目して聴くと非常にすばらしいことに気付かされます。
ギターソロも何気にかっこいいフレーズをたっぷり披露しています。
ただ、楽曲がちょっと弱いかな、というのは多少感じてしまうのは否めません。
ギターは一級品だが、ソングライティングの点で、バラつきがあるのはこれまで同様と言えるでしょう。
主にギタリストのための楽曲がやや多いのが少しもったいない気はします。

 

B面1曲目はHOT FOR TEACHER(ホット・フォー・ティーチャー)。

 

これはAlex Van Halen(アレックス・ヴァン・ヘイレン)のツーバスによる高速ドラミングで幕を開ける強烈なロックンロールです。
アレックスによるイントロのドラムプレイは高速シャッフルビートです
どうしたらあんなに早く3連符のツーバスを踏めるのか、恐ろしくハイテクになってます。
そしてそれに乗るように、エディの高速タッピング(ライトハンド奏法)で曲が始まります。
ギターリフもシャッフルのリズムに乗り非常に心地よいです。
デイヴのヴォーカルが入ると、ちょっと猥雑な雰囲気の入ったロックンロールに変わります。

 

この曲に関して言えば、リズム感が肝と思われますが、見事に3連のリズムに乗り、タイトに演奏されています。
またギターソロがまたまた素晴らしいです。
めっちゃ弾きまくりで、エディの魅力全開になってます。

 

疾走感あふれるこの曲はアルバムからの4thシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャート第56位、同誌Mainstream Rockチャートでは第24位を記録しました。

 

2曲目は、I’LL WAIT(アイル・ウェイト)。

 

これはアルバム中でシンセがフィーチャーされている2曲のうちのもう一つの曲、です。
このイントロもシンセがふんだんに用いられ、荘厳な雰囲気をかもし出しています。
また、曲全体にもシンセのベースラインが聞こえているところも新境地ではないでしょうか。

 

これもエディの挑戦曲となってます。
しかし、やはりデイヴとテンプルマンは気に入っていなかったようで、アルバムから除くことを望んだようです。
確かに今までのヴァン・ヘイレンと違うサウンドなので、受け入れがたかったのでしょう。
だが、エディのプッシュで曲はアルバムにとどまり、2ndシングルとしてもカットされました。
シングルチャートでは第13位を記録、Mainstream Rockチャートでは第2位という大ヒットを記録することになります。

 

またしてもエディの読みのほうが当たったと言うことになるでしょう。

 

3曲目はGIRL GONE BAD(ガール・ゴーン・バッド)。

 

スリリングな展開とスピーディなプレイが印象的な楽曲です。
エディの、彼らしいプレイがやはりここでも満載になってます。
やはり、リフやオブリに光るプレイが詰め込まれています。
アレックスのドラミングも、かなり派手に叩かれていて、楽曲の展開に大きく貢献していますね。
隠れた名曲のような存在となってます。

 

アルバムラストはHOUSE OF PAIN(ハウス・オブ・ペイン)。

 

ギターのヘヴィなリフがシリアスっぽい雰囲気を演出しています。
しかし、ギターソロとともに始まる疾走プレイは最高です。
ソロもエディ節満載となっています。
しかし、やはりこの曲もエディの天才的なギターリフが際立っていると言えるでしょう。
特にイントロの変拍子っぽいリフは、完全にオリジナルな感じでになってます。
どうやったらこんなの思いつくの?と思えるリフを生み出すのもやはり天才の証だと言えるのではないでしょうか。

まとめとおすすめポイント

ヴァン・ヘイレンの6thアルバム、1984はビルボード誌アルバムチャート最高位第2位を記録しました。(ちなみにそのときの1位は37週連続No.1を更新中のマイケル・ジャクソンのスリラーです。とてもかなう相手ではありませんでした。)
そして売り上げはアメリカだけで最終的に1000万枚を超えることになりました。

 

この大ヒットの要因は、やはりエディによるシンセの積極的な導入にあるに違いありません。
それによって80年代を代表するNo.1ヒット、ジャンプを生み出すことができました。

 

しかしこのことは、大ヒットという明るい光とともに暗い影ももたらすことになります。
シンセの積極的な活用を渋ったデイヴとの確執です

 

結局デイヴは翌1985年、自身のファーストソロEP、CRAZY FROM THE HEAT(クレイジー・フロム・ザ・ヒート)をヒットさせ、ヴァン・ヘイレンを脱退することになりました。
ヴァン・ヘイレンの顔とも言うべきダイアモンド・デイヴを失ったことは多くのファンを失望させました。

 

もちろん、その後のサミー・ヘイガー加入により、より大きな成功を収めて行きはしますが、デイヴ時代の楽曲をライヴでほぼ聴けないという、ファンにとっては筆舌に尽くしがたい苦痛を受けることになったのです。
そのような濃いいファンにとって、1984はヴァン・ヘイレンのいわばラストアルバムとも言える存在になっています。
しかしラストで有終の美を飾ったと言える素晴らしい出来なので、そこだけは正しく評価したいと思います。

 

ワイルドなデイヴのヴォーカルと、初期ヴァン・ヘイレンサウンドの集大成のようなアルバム。
そしてタイトルが示すとおり、80年代を代表するアルバム、1984はハードロックファン、ギターキッズにはマストなアルバムとしておすすめしたいと思います。

チャート、セールス資料

1984年リリース

アーティスト:VAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)

6thアルバム、1984

ビルボード誌アルバムチャート第2位 アメリカで1000万枚のセールス

1stシングル JUMP(ジャンプ) ビルボード誌シングルチャート5週連続No.1、同誌Mainstream RockチャートNo.1

2ndシングル I’LL WAIT(アイル・ウェイト) シングルチャート第13位、Mainstream Rockチャート第2位

3rdシングル PANAMA(パナマ) シングルチャート第13位、Mainstream Rockチャート第2位

4thシングル HOT FOR TEACHER(ホット・フォー・ティーチャー) シングルチャート第56位、Mainstream Rockチャート第24位




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