最強のラストアルバム   THE POLICE   -   SYNCHRONICITY

THE POLICE(ポリス)との出会い





僕が中3の頃、つまり洋楽に目覚めて間もない頃、クラスの秀才のI君が下敷きのファイルケースの中に一つの楽曲の歌詞を書いてはさんでいました。

 

タイトルはEVERY BREATH YOU TAKE

 

僕は全く知らない曲名でしたが、英語の歌の歌詞を持ち歩いているのに衝撃を受けました。

 

かっこいい。

 

意味はわからなかったけど、すごく興味を引かれたのです。

 

そのうちにその曲の正体がTHE POLICE(ポリス)のEVERY BREATH YOU TAKE(見つめていたい)という楽曲であることを知ることになります。
そして実はその年に大ヒットしていて、全米No.1にも輝いていたのです。

 

というわけで、僕は「見つめていたい」のヒットするさまをリアルタイムでは見損なったのでしたが、そこからポリスを聴き始めることになりました。

 

じきにカセットテープに「見つめていたい」の入っているアルバム、SYNCHRONICITY(シンクロニシティー)を収めます。

 

これは1983年リリースのアルバムで、すでに世界的ヒットとなっていました。
これをリアルで体験できなかったのは、一生の不覚ですが、洋楽へ目覚めたタイミングが遅かったので、仕方ないですね。

 

後追いでポリスを聞き始めるのであるが、遅ればせながら、かっこいい、と思いました。

 

では今日は、1983年リリースの、THE POLICE(ポリス)の5thアルバム、SYNCHRONICITY(シンクロニシティー)をご紹介します。

 

SYNCHRONICITY(シンクロニシティー)の楽曲紹介

A面(アルバム前半)

オープニングを飾るのは、SYNCHRONICITY Ⅰ(シンクロニシティーⅠ)。

 

非常にスリリングなイントロからはじまる、超絶にかっこいい楽曲です。
アルバムの特に前半の緊張感をこの曲が見事に演出していますね。
イントロにドラムが加わっていくところとか、鳥肌ものです。

 

そしてSting(スティング)のハイトーンなヴォーカル、とそれに絡まるコーラス。
Stewart Copeland(スチュアート・コープランド)のドラムスが、曲全体に緊張感を与えています。
もともとパンクをやってたバンドだけあって、このドラムのシンプルな疾走感は非常にかっこよくキマってますね。
そして時々入るフィルインの小気味いいこと。
アルバム全体のイントロとして、つかみはオールオッケーとなっています。

 

2曲目は、WALKING IN YOUR FOOTSTEPS(ウォーキング・イン・ユア・フットステップ)。

 

これは不思議なノリのある楽曲です。
静かにたんたんと楽曲は進んでいきます。
ドラムというよりパーカッションのようなものが全体の雰囲気を決定付けています。
そこにスティングのヴォーカルがさえわたってます。
低音から歌い始めていますが、このように抑えて歌うのも魅力的な声ですね。

 

が、途中から一気にオクターブあがってハイトーンで歌いだします。
またこの高音も魅力的なのです。
スティングは生まれ持ってのヴォーカルの才能があるようですね。
それに端正な顔立ち。

 

人気が出ないほうがおかしいです、はい。

 

3曲目はOH MY GOD(オー・マイ・ゴッド)。

 

これもシンプルな楽曲となっています。
ここでもスチュアートのドラムがびしっと曲を引き締めています。
それに目立ちませんが、Andy Summers(アンディ・サマーズ)のエレキギターもいろんなところで曲に様々な効果を与えています。
当時、楽器について僕はあまりわからなかったので、聞き分けれてなかったのだが、今聞いてみると、アンディの重要な役割が理解できます。
加えて、音数の少ない楽曲だけに、スティングのベースもよく聞こえてきて、スリーピースバンドらしくてとてもいいですね。

 

4曲目はMOTHER(マザー)。

 

この曲はアンディ・サマーズによる楽曲です。
あんな繊細なエレキギターを披露するアンディがこんな歌を作って歌うなんて、ちょっと意外でしたね。
完全に狂気の世界である。
よくここまでやりきったな、というのが正直な感想です。
ここまでやると、アルバムから完全に浮きそうなものですが、アルバム前半(カセットA面)の中で、アクセント的な役割を果たしています。
賛否分かれると思いますが、僕はこの曲と次のスチュアートの曲への流れは、決して悪くないと思います。

 

5曲目はMISS GRADENKO(ミス・グラデンコ)。

 

この曲はスチュアート・コープランドによる楽曲です。
こっちは作者のスチュアートは歌わず、スティングのヴォーカルとなっています。
マザーの後だけに、曲の軽快さ、ポップさが際立っていますね。
ここではアンディは正気を取り戻して(!?)エレキギターのバッキング、アルペジオのような不思議なメロディを忙しく弾き続けています。
これこそアンディの職人技である。
そして、やはりこの軽快さを生み出しているのがステュアートのドラムスと言えるでしょう。
心地よく軽快に、はじけたリズムを抜群の安定感でしっかりと生み出しています。

 

6曲目はSYNCHRONICITY Ⅱ(シンクロニシティーⅡ)。

 

アンディが帰ってきた(!)ところで、A面ラストを飾る、傑作です。
これもPARTⅠ同様スリリングなロックとなっています。
非常に緊張感がありながらも、楽曲として最高級の出来上がりとなっています。

 

スチュアートのドラムの音がその点で大きな貢献をしています。
スネアの音、ハイハット、フィルイン、どれをとってもあまり他のバンドのドラマーとは似ていないのです。
ドラマーとして一つ抜けている、つまりオリジナルなのです。

 

そしてアンディのエレキギターの音色や使い方もやはり独特で、いろんな部分で楽曲を引き立てていますね。
また音使いのセンスも抜群です。
やたら弾きまくりたがるギタリストも多い中で(決してそれを否定するつもりはありませんが)アンディは曲の引き立て役に徹しています。
そんな彼のエレキも他では聴けません。
やはりオリジナルなのです。

 

そしてバンドのフロントマン、スティングの生まれ持った声と、優れたヴォーカル能力
やはり彼もオリジナルである。
同じようなヴォーカルを見ることはほぼないと思われます。

 

こんなオリジナルな3人がめぐり合い、一つのアルバムを作り上げたというのは奇跡と呼べるのではないでしょうか。

 

この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャート第16位を記録しています。

 

こうして奇跡のアルバムのA面が幕を下ろします。

 

B面(アルバム後半)

 

そしてここからのB面でポリスはこれまでと違う新たな面を打ち出すことに成功したと僕は思っています。

 

B面1曲目は、EVERY BREATH YOU TAKE(見つめていたい)。

 

スネア一発で始まり、エレキギターのアルペジオとベースでたんたんと進んでいくミドルテンポの楽曲です。
非常にシンプルなのに、すごく味わい深い曲ですね。
アルペジオも簡単そうに聞こえて、実際やってみると、すごく難しいです。
かなりなストレッチが必要で、僕はすぐにコピーを断念した覚えがあります。
アンディの、ハイテクには見えないけど実はハイテクなギタープレイがこの曲全体を貫いています。

 

スチュアートのドラムもそうです。
ただ淡々と叩いているように見えて、主張するところはきちんと主張しています。
曲調が変わる瞬間をドラムがバシッと演出してみせるところなどはやはり鳥肌が立ちそうになります。

 

そしてスティングも淡々と歌っているが、大サビでは力強いヴォーカルを聞かせてくれる。
このように、単調に見えながらも、実は要所要所でツボを抑えた歌唱やプレイがあるので、飽きることなく何度も聴ける名曲になっているのです。

 

そしてAメロの歌詞はこんな感じでです。

 

EVERY BREATH YOU TAKE           君が呼吸するたびに
EVERY MOVE YOU MAKE   君が動くたびに
EVERY BOND YOU BREAK         君が絆をこわすたびに
EVERY STEP YOU TAKE   君が歩む一歩ごとに
I’LL BE WATCHING YOU  僕は君を見つめているだろう

 

完璧なラヴソング、と思いました。

 

が、しかし、この歌は、完全なストーカーソングだったということが後に判明します。
スティングは後に、この曲は嫉妬や監視を歌ったものだと述べています。
そうやってもう一度歌詞を見ると、身の毛がよだってくるではないですか。

 

しかし、あの素敵な曲調、アレンジからすると、ぜひとも完璧なラヴソングであってほしかったと思ったのは僕だけではないでしょう。

 

歌というものはすべてその意味は聴き手に委ねられるものであるはずです。

 

というわけで、僕はこの曲に関しては、作ったスティングがなんと言おうと、究極のラヴソングとして認定したままにしておきたいと思います。

 

まあ、歌詞の内容がどうあれ、楽曲のよさは誰も否定できないでしょう。
これまでのポリスとは違ったアプローチで、大ヒットを記録したのです。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで8週連続No.1、同誌Mainstream Rockチャートでは9週連続No.1、同誌 Adult Contemporaryチャートでは第5位を記録しています。
また1983年のビルボード誌年間チャートでも第1位を獲得しています。

 

2曲目は、KING OF PAIN(キング・オブ・ペイン)。

 

これもシンプルなアレンジで、最小限の音のみでスタートします。
そこにスティングがやはり淡々と歌って行きます。
途中で、やはりドラム基点で曲がどんどん盛り上がって行きます。
最小限の音とコーラスで盛り上がりを演出しています。
でも基本的にシンプルな楽曲なのです。
キャッチーと言えばキャッチーな楽曲ゆえにチャートもPVなしにそこそこ上がりました。
このシンプルなのに、厚みがある不思議な感覚が魅力の曲である。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第3位、Mainstream Rockチャートでは5週連続No.1を記録しています。

 

3曲目はWRAPPED AROUND YOUR FINGER (アラウンド・ユア・フィンガー)。

 

PVでは数多くのろうそくに囲まれて演奏する三人の姿が印象的です。
恐らく1.5倍か倍速リップという手法で、まず高速の曲に合わせて口パク(リップシンク)した映像を撮り、それを元のスピードに戻すと動きだけゆっくりになり、口は曲と合っている、という不思議な映像になります。
当時はそんな映像見たことなかったので、一体どうやって撮影したんだろうと不思議に思ったものでした。

 

映像はともかく、楽曲も落ち着いたもので、静かに少ない音数で進んで行きます。
ゆったり始まるものの、サビはいつものごとく、スチュアートの切れのよいドラムが冴えています。
そして後半の盛り上がりもドラム先行でいつものように展開して行きます。
その辺が小気味いいですね。
それに加えてアンディの効果音的なギターが散りばめられています。
なかなかいい曲だが、アルバム前半とは大きく異なる種類の曲となっています。

 

この曲は4thシングルとしてカットされ、シングルチャートで第8位を記録しています。

 

アルバムラストはTEA IN THE SAHARA(サハラ砂漠でお茶を)。

 

ベース先行でベースの目立つ静かな静かな歌です。
これでポリスのアルバムが終わっていいのか、と思える地味な曲だ。
でも後半B面のコンセプトとは非常に合っているような気もするので、これでいいのでしょう。

まとめとおすすめポイント

1983年リリースの、THE POLICE(ポリス)の5thアルバム、SYNCHRONICITY(シンクロニシティー)は、ビルボード誌アルバムチャートで17週連続1位を獲得、アメリカで800万枚を売り上げています。

 

結局このアルバムはざっくり二つに分けられます。
A面は、ロック、レゲエやパンク、などこれまでのポリスの雰囲気を十分に保ったままさらに先に進んだ感じになっています。
アンディとスチュアートの曲もアクセントとして存在感を放っていますね。
何よりシンクロニシティのⅠとⅡが最初と最後でA面全体をはさみ、全体としてスリリングに調和よくまとまっているイメージを作り出しています。

 

そしてB面これまでのポリスとは違うテイストをにじませています。
名曲、「見つめていたい」に始まり、どれもスピード感ではなく、じっくり聴かせることに主眼が置かれているようです。
確かに、じっくりと聴きこむと曲の世界にひきこまれていきます。
これまでとは別のタイプのポリスの魅力にひきつけられるのです。

 

どちらがよい、というものではないでしょう。
A面が好きだ、という人もいれば、B面がいい、という人もいるに違いありません。
僕はこの2種類のコントラストが、このアルバムの魅力を高めているのではないかと考えています。
当然これら10曲をシャッフルして一枚のアルバムを作ることも可能だったでしょう。
そうすれば、全体としてバラエティに富んだ調和の取れたアルバム作りも目指せたはずです。

 

しかし彼らはそうしませんでした。
これには結果的にラストアルバムになった事実が関係しているのかもしれないとも思えます。
すでに彼ら、といってもスティングとスチュアートの仲が冷え切っていたのは周知の事実となっています。
そんな中でもこのクオリティでアルバムを作れるのだから頭が下がります。
しかし、彼らは最後に普通のアルバムを作りたくなかったのではないか、と僕は考えます。
まずA面でこれまでの集大成的なものをつくり、B面で、最後を飾る、多くの人の心に残る楽曲を集めたかったのではないでしょうか。
結果として、A面もB面もどちらも互いを補う、もしくは際立たせる、コントラストの強いアルバムが完成しました。
それは人々の記憶に残り、永遠にポリスの名を歴史に刻んで行くことになったのです。

 

これは僕の妄想に過ぎないかもしれませんが、前後半のコントラストがアルバムをいっそう個性的な、記憶に残るものにしている、ということは決して大外れな妄想ではないでしょう。

 

スティングのベース&ヴォーカル、アンディのエレキギター、スチュアートのドラム、この優れた3者のせめぎあいが歴史に残るアルバムを形作りました。
このようなレベルのスリーピースバンドはその後も出なかったし、これからも出ることはないでしょう。
この3人が同じバンドで活動したというのは奇跡的な出来事に違いありません。

 

願わくは3人が仲良くやって、作品を作り続けて欲しかったのですが、彼らは翌年活動休止に入り、事実上解散状態になりました。

 

もしかしたら不仲であったことがこれまでの作品に適度な緊張感やテンションを加えていたのかもしれません。

 

そのMAXがこのラストアルバムで、それゆえにこの傑作ができたのであれば、それはそれで僕たちリスナーはそれを受け入れるべきなのでしょう。

 

ただ、最高のラストアルバムを残してくれたことに感謝しながら。

 

やはり80年代を語るには欠かせないマストアルバムと言えると思います。

 

3人のテクニシャンの技術のせめぎあいが作り出した傑作をぜひご一聴ください。

チャート、セールス資料

1983年リリース

アーティスト:THE POLICE(ポリス)

5thアルバム、SYNCHRONICITY(シンクロニシティー)

ビルボード誌アルバムチャート17週連続No.1 アメリカで800万枚のセールス

1stシングル EVERY BREATH YOU TAKE(見つめていたい) ビルボード誌シングルチャート8週連続No.1、同誌Mainstream Rockチャート9週連続No.1、同誌 Adult Contemporaryチャート第5位

1983年のビルボード誌年間チャート第1位

2ndシングル KING OF PAIN(キング・オブ・ペイン)  シングルチャート第3位、Mainstream Rockチャート5週連続No.1

3rdシングル SYNCHRONICITY Ⅱ(シンクロニシティーⅡ) シングルチャート第16位

4thシングル WRAPPED AROUND YOUR FINGER (アラウンド・ユア・フィンガー) シングルチャート第8位

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