ザ・エイティーズ スターシップの2ndにしてピークのアルバム STARSHIP - NO PROTECTION
前作KNEE DEEP IN THE HOOPLA(フープラ)からの歩み
STARSHIP(スターシップ)としてのデビューアルバム、1985年リリースのKNEE DEEP IN THE HOOPLA(フープラ)は、全米チャートで第7位を記録し、アメリカで100万枚をセールス。
2曲のNo.1ヒットを放ち、計4曲のシングルヒットを出すなど、ジェファーソンの看板が取れて、一躍、時のバンドになった。
このブレイクの理由は、やはり、過去のこだわりを思い切って捨てたことにあるでしょう。
1966年から1984年までの長い間、JEFFERSON AIRPLANE(ジェファーソン・エアプレイン)からJEFFERSON STARSHIP(ジェファーソン・スターシップ)へとバンド名を変えながらも、数多くのアルバムを出してきた歴史的なバンド。
その重荷を一気に取り払って80年代サウンドのポップバンドに生まれ変わったことが、この大ヒットの要因に違いありません。
加えて、ほとんどの楽曲で外部のライターを起用。
売れ線のいい楽曲が集まったのも大きかったと思われます。
しかし、この代償として、そのような流れをいやがるメンバーは脱退していきます。
また古くからのファンも、産業ロック化していくバンドから離れていったのも事実だ。
だが、新生スターシップは、その辺も思いっきり割り切って、80年代に生きる新たなリスナーに焦点を合わせた結果が、この成功劇なのでした。
今回のアルバム制作に当たって、フープラの時のメンバーであった、そしてバンドの重要なソングライターでもあった Pete Sears(ピート・シアーズ)が抜けて4人の編成になっている。
ピートもバンドの音楽性の変化を受け入れられなかった一人なのである。
で、残ったのが、
ヴォーカル Mickey Thomas(ミッキー・トーマス)
ヴォーカル Grace Slick(グレース・スリック)
ドラムス Donny Baldwin(ドニー・ボールドウィン)
ギター Craig Chaquico(クレイグ・チャキーソ)
という4人。
この4人で、80年代に適したエレクトロニクスやプログラミングを駆使し、フープラの延長線上にある作品を作り上げました。
今日は1987年リリースの、STARSHIP(スターシップ)の2ndアルバム、 NO PROTECTION(ノー・プロテクション)を紹介したいと思います。
NO PROTECTION(ノー・プロテクション)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、BEAT PATROL(ビート・パトロール)。
イントロで、静かなシンセの上で歌い上げるミッキー・トーマスのヴォーカル。
何かが起こる、という期待を起こさせるイントロだったが、ふたを開けると、前作のヒット曲、シスコはロックシティを上回るポップソングだ。
軽快なダンスビート、右に左に音が飛び交うエフェクト、もはや昔のジェファーソンの名残は完全に取っ払われている。
完全に2匹目のドジョウ狙いのようだ。
シスコはロックシティの第2弾を狙ったに違いない。
ミッキーとグレース・スリックの二枚看板のヴォーカルの掛け合いは非常にいい。
しかし、楽曲があまりにもスーパーポップで、産業ロックでもなく、産業ポップになってしまった感じさえする。
その上、シスコはロックシティより平坦な感じで、いまひとつ大きく盛り上がらない。
おもちゃ箱のようなサウンドなのに、いまひとつキラキラ感が足りないのだ。
結構、この1曲目にはショックを受けました。
完全にこっちで来たか、と。
この曲はアルバムからの3rdシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第46位と沈みました。
しかし、2曲目は真逆の名曲が据えられていた!
超名曲、NOTHING’S GONNA STOP US NOW(愛はとまらない)である。
これは、たまらなくいい曲だ。
80年代を代表するミドルテンポの楽曲だ。
まさにキラキラしたシンセが生み出すエイティーズサウンド。
ヒットソングメイカー、Diane Warren(ダイアン・ウォーレン)のつむぎあげる美しくキャッチーなメロディ。
そして、ミッキーとグレースという優れたヴォーカリストの織り成す男女の美しいハーモニー。
まったく非の打ち所のない楽曲だ。
やはり2枚看板が素晴らしいだけに、楽曲がはまるととんでもない名曲が生まれてしまう。
この爽やかで極上のポップナンバーは、アルバムの先行シングルとしてリリース。
そして映画「 Mannequin(マネキン)」の主題歌として大ヒット、ビルボード誌シングルチャートでNo.1、Mainstream Rockチャートで第16位、Adult ContemporaryチャートでNo.1を獲得しました。
3曲目は、IT’S NOT OVER (‘TIL IT’S OVER)(イッツ・ノット・オーヴァー)。
結構僕の好きなタイプなのだが、やはり何か方向性が違う。
ミッキーのヴォーカルが好きな僕にとって、これはなかなかかっこいいはずなのだが、なにかフックが足りなく感じてしまうのだ。
ジェファーソン・スターシップの後期には、ハードロック系の音を目指していたのだが、それとは何かが違う。
何か軽いのである。
ドラムも迫力あるっぽい音がするし、ギターもヘヴィっぽいリフを刻んでいる。
ミッキーもシャウトしている。
でも何かが違っている。
もうちょっとストレートなハードロックで勝負して欲しかったのは僕だけだろうか。
しかし、2ndシングルとしてリリースされたこの曲は意外にもヒットし、シングルチャートで第9位を記録したのでした。
4曲目はGIRLS LIKE YOU(ガールズ・ライク・ユー)。
これはいいぞ。
イントロこそ大げさだが、歌が始まってからのシリアスなハードロック。
ギターリフも決まっててとてもかっこいい。
やはりミッキーにはこういうのを歌って欲しいものだ。
なかなかのハードポップで、これは気に入ってます。
後半のアレンジもとても良い。
ハードなギターが曲全体を支配している。
僕はスターシップには、ただの能天気な超明るい楽曲よりも、この「ジェファーソン・スターシップ」の後期のようなハードなサウンドを望んでしまうのだ。
5曲目はWINGS OF A LIE(ウィングス・オブ・ア・ライ)。
ゆったりしたAOR系の楽曲だ。
何と言ってもサビのメロディが非常に美しい。
それをメロディアスに歌い上げるミッキーはやはり優れたヴォーカリストだと感じさせてくれます。
6曲目はTHE CHILDREN(ザ・チルドレン)。
AメロBメロは静かな、ちょっと不思議な雰囲気の歌だ。
しかし、サビでは一気に明るい合唱へ。
ラスト、サビでの二人のヴォーカルに合唱が加わって盛り上がるところがちょっといい感じだが、一気にフェイドアウトするのが残念である。
7曲目はI DON’T KNOW WHY(アイ・ドント・ノウ・ホワイ)。
今作ではあまり目立っていないグレースがメインで歌っている。
途中からミッキーが入ってくるが、グレースより声が高いのでは、と思えるハイトーンヴォイスで盛り上げてます。
曲は、あまりフックがあるわけでなく、まあ普通の楽曲である。
ただ、ラストのミッキーのハイトーンにはしびれてしまいます。
8曲目はTRANSATLANTIC(トランスアトランティック)。
ファンキーなベースの目立つ、ノリのいい曲だ。
このちょっとアダルティな雰囲気は非常にいいですね。
そして、転調してからのサビも悪くありません。
やはりこの辺の歌いわけもミッキーが上手いので安心して聴けます。
シンセがゴージャスになり、それに対抗して声を張り上げるミッキーのハイトーンヴォイスもいけてますね。
9曲目はSAY WHEN(セイ・ホエン)。
イントロからして非常にいいですね。
シンセの使い方が、エイティーズで、とてもいい雰囲気を作り出しています。
また、哀愁のあるメロディも非常にいいです。
サビもキャッチーでメロディアス。
これは名曲です。
前作でBEFORE I GO(ビフォア・アイ・ゴー)という隠れ名バラードを提供したのと同じ、David Roberts(デヴィッド・ロバーツ)という人の作品だ。
やはり、名曲を作る人はツボを押さえてます。
そしてそれを歌い上げるミッキーの歌唱能力も素晴らしいです。
10曲目はBABYLON(バビロン)。
中東の雰囲気を少し感じられるイントロで、少し妖しい雰囲気を持つ楽曲だ。
グレースが、その雰囲気を彼女らしく歌い上げている。
そしてサビではミッキーとグレースの絶妙なハーモニーが来た、と思いきやいきなり楽曲はスピードアップ。
一曲に2曲入ってるかのような展開があわただしい曲である。
でも、言うてもなかなかいい曲に仕上がってます。
アルバムラストはSET THE NIGHT TO MUSIC(今夜はミュージック・ナイト)。
最後は2枚看板の二人で、美しいメロディのバラードを歌い上げます。
この曲もダイアン・ウォーレンによるもので、文句なく素敵なメロディで構成されています。
この曲は4thシングルとしてリリースされ、ビルボード誌のAdult Contemporaryチャートで第9位と、楽曲の良さが高く評価されました。
こうして二人の美しいヴォーカルハーモニーにより、静かにアルバムは幕を下ろします。
まとめとおすすめポイント
1987年リリースの、STARSHIP(スターシップ)の2ndアルバム、 NO PROTECTION(ノー・プロテクション)はビルボード誌アルバムチャート第12位、アメリカでの売り上げは50万枚にとどまりました。
僕にすれば、意外に売れたな、という感じです。
やはり「愛はとまらない」の大ヒット、これに尽きるのではないでしょうか。
前作は全米No.1の2曲の他にも、良曲はアルバムに収められてました。
今回は結構当たりはずれが大きく感じます。
まあ、悪いわけではないのですが、キラーチューンは「愛はとまらない」の1曲だけというのはちょっと致命的ですね。
こちらもガールズ・ライク・ユーやトランスアトランティックという、ノリのいいちょいハードな楽曲もありますし、セイ・ホエンや今夜はミュージック・ナイトなど、ミディアムテンポの名曲もあります。
ただ、やはり小粒ではありますね。
愛はとまらない、に続くシングルが弱かった、というのがいまいち売れなかった理由の一つと思われます。
とはいっても、ミッキーとグレースの2枚看板は今回も輝いてはいます。
二人の絶妙なハーモニーは言うことないですし、ミッキーのハイトーンヴォイスは、エイティーズのお宝クラスの価値があると思います。
これで、楽曲と方向性を間違わなければ、まだまだ行けたのに、と残念に感じます。
でも、結局はスターシップに何を求めるかで、このアルバムは大きく評価を変えるのではないでしょうか。
ジェファーソン・エアプレイン時代から彼らを知っている人は、このあまりの変化についていけないかもしれません。
ジェファーソン・スターシップ時代からの人は、ポップになりすぎたこの作品を受け入れにくいかもしれません。
ここには僕も含まれます。
しかし、スターシップになってからのファンにとっては名作と感じられるかもしれないのです。
そういう意味で非常に評価の難しいアルバムだと言えるでしょう。
80年代に復活してキラリと輝いたスターシップは今後輝きを失っていきますが、ここまでは決して80年代サウンドで悪くはありません。
あの頃のエイティーズサウンドを懐かしみたい方には、前作と共におすすめのアルバムと言えるに違いありません。
チャート、セールス資料
1987年リリース
アーティスト:STARSHIP(スターシップ)
2ndアルバム、NO PROTECTION(ノー・プロテクション)
ビルボード誌アルバムチャート第12位 アメリカで50万枚のセールス
1stシングル NOTHING’S GONNA STOP US NOW(愛はとまらない) ビルボード誌シングルチャートNo.1、Mainstream Rockチャート第16位、Adult ContemporaryチャートNo.1
2ndシングル IT’S NOT OVER (‘TIL IT’S OVER)(イッツ・ノット・オーヴァー) シングルチャート第9位
3rdシングル BEAT PATROL(ビート・パトロール) シングルチャートで第46位
4thシングル SET THE NIGHT TO MUSIC(今夜はミュージック・ナイト) Adult Contemporaryチャート第9位
最後まで読んでくださりありがとうございました。ランキングに参加しています。応援クリックよろしくお願いします!
↓ ↓ ↓