ヴォイス・オブ・フォリナー ルー・グラムのソリッドなデビューソロアルバム LOU GRAMM - READY OR NOT
フォリナー結成までのLOU GRAMM(ルー・グラム)の歩み
LOU GRAMM(ルー・グラム)はニューヨーク州ロチェスターの生まれで、10代半ばからいろんなバンドで音楽活動を行なっていました。
歌手とトランペット奏者の間に生まれた息子ということで、当然のように音楽の道を歩み始めるのでした。
やがて、彼はBlack Sheepという、FreeやBad Companyといったブルーズロックバンドに影響されたバンドのフロントマンとして活動します。
そこではStick Around (1973)というシングルヒットを放ち、続いて2枚のアルバム、Black Sheep (1974) と Encouraging Words (1975)をリリース、そこそこの成功を収めることになりました。
そして、KISSのライヴのオープニングアクトを務めた1975年のクリスマスイヴの日、路面凍結のために起きたスリップ事故で、機材トラックが横転。
その影響でライヴが出来なくなり、結果として次のアルバムの費用の調達の見込みも失い、あえなくバンドは解散。
順調に活動が広がっていただけに、ルーにとっては大きな不幸となりました。
しかし、ミラクルの種は既にまかれていたのです。
この出来事の一年ほど前、ルーは Mick Jones(ミック・ジョーンズ)に出会っていたのです。
その際、ルーはミックに、Black Sheepの1stアルバムをあげていたのでした。
それで、1976年初頭、トラック事故から程ない頃、これから新しいバンドを立ち上げようとしていたミックは、バンドのリードヴォーカリストのオーディションに参加するようルーを招いたのです。
結果、ルーは新バンドに加入することになるのでした。
FOREIGNER(フォリナー)での栄光
新バンドの当初の名前は、TRIGGERだったが、後にFOREIGNER(フォリナー)と改められます。
フォリナーとは外国人、という意味がありますが、バンドメンバーに英米人が混在する構成に由来しての命名でした。
ここから、栄光の快進撃が始まったのです。
1977年リリース 1stアルバムFOREIGNER(栄光の旅立ち) ビルボード誌アルバムチャート、第4位 アメリカでの売り上げ500万枚
1978年 2ndアルバムDOUBLE VISION(ダブル・ヴィジョン) 同第3位 同700万枚
1979年 3rdアルバムHEAD GAMES(ヘッド・ゲームス) 同第5位 同500万枚
1981年 4thアルバム4(4) 同第1位 同600万枚
1984年 5thアルバムAGENT PROVOCATEUR(プロヴォカトゥール) 同第4位 同300万枚
また、付け加えるなら、1982年リリースのベストアルバムRECORDS(ベスト・オブ・フォリナー)は全米第10位、700万枚を売り上げています。
さらに、最初の8つのシングルがTOP20入りしたが、これはあのビートルズ以来の記録となりました。
しかし、こうしたヒットの陰で、少しづつ不協和音も聴かれるようになってきます。
ミック・ジョーンズはI WANT TO KNOW WHAT LOVE IS(アイ・ウォナ・ノウ)やWAITING FOR A GIRL LIKE YOU(ガール・ライク・ユー)といった曲に代表される、メロウなバラードを中心にする音楽性を求めるようになってきていました。
一方、ルー・グラムはギターとドラムを中心とする、ソリッドでハードなロックを目ざしています。
この両者の間の音楽性のぶつかり合いは、アルバム「4」のあたりから生じ始め、そうした争いのために「プロヴォカトゥール」製作には3年を要することにもなったのです。
プロヴォカトゥールリリースに続くツアー終了後、ミックはVAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)のアルバム5150などのプロデュースに専念。
そして、一方のルーはソロアルバムを制作することになります。
今日は1987年リリースのLOU GRAMM(ルー・グラム)の1stソロアルバム、READY OR NOT(レディ・オア・ノット)を紹介します。
READY OR NOT(レディ・オア・ノット)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、アルバムタイトルともなっている楽曲、READY OR NOT(レディ・オア・ノット)。
シンプルで力強いドラム&ベースのイントロに、切り裂くようなギターリフと、ルーの熱いヴォーカルが入ってくる。
やはり、フォリナーのソリッドなロックテイストは、ルーのやりたいことだったに違いないとすぐに理解できる。
そして、ルーのヴォーカルは、熱くソウルフルだ。
このヴォーカルの強力な存在感は、このアルバムは「フォリナーのアルバムか?」と一瞬感じさせる。
しかしよく聴いていくと、アレンジがゴージャスに変化してきたフォリナーのサウンドとは違う。
シンプルで、ソリッドでストレートなロックサウンドがここにあった。
この曲はアルバムからの2ndシングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで、第54位だが、同誌Mainstream Rockチャートでは第7位を記録した。
2曲目はHEARTACHE(ハートエイク)。
この曲も、力強い楽曲だ。
その上キャッチーで非常にかっこいい。
疾走感があるわけではないが、しっかり突き進む感じがあって心地よい。
そして何よりルーのヴォーカルは冴え渡っている。
もはやこの天賦の声があれば、どんな曲もハイレベルで成立するのでは、と感じさせる。
3曲目はMIDNIGHT BLUE(ミッドナイト・ブルー)。
先行シングルであるこの曲を聴いたときは、鳥肌が立ったものだ。
イントロは静かに始まるが、歌が入り、そこにドラム&ベースが加わっていく瞬間は最高である。
この段々盛り上がる感じは非常に好感が持てる。
サビは特段キャッチーでもないのだが、曲全体が非常にかっこよく出来ている。
1stシングルのこの曲は、シングルチャート第5位のヒットとなり、Mainstream RockチャートではNo.1を記録している。
4曲目はTIME(タイム)。
80年代に流行ったようなギターリフで始まるロックチューンだ。
しかし、ルーの歌が入ると、他とは全く異なる唯一のロックソングに変わる。
やはり、このようなソリッドなハードロックを歌わせるとピカイチである。
それでいて、曲もキャッチーで聞き心地は抜群だ。
アルバムのほとんどがルーとブルース・ターゴンという人の共作になっている。
彼はBlack Sheepのベーシストだった男だそうだ。
こうして当時の夢をもう一度、という雰囲気もあるのだろう。
これだけの曲を書けると言うことは、当時のバンドもポテンシャルはあったのだろう。
もし、あのトラック事故がなければ、ルーはブラック・シープでブレイクしていたかもしれない。
まあ、たらればを言っても仕方ないが、この二人はこのアルバム全編でいい曲を書いていることには間違いない。
5曲目はIF I DON’T HAVE YOU(イフ・アイ・ドント・ハヴ・ユー)。
静かな、バラード気味の曲だ。
しかし、ルーのヴォーカルがエネルギーをたっぷり放射しているので、パワーバラードと言えるかもしれない。
やはり、このようなバラードもしっかり聴かせてくれます。
ミック・ジョーンズが、このようなバラード中心で行きたいと考えても仕方ないくらい、ルーのヴォーカルのポテンシャルは高いですね。
やはり、ソリッドなロックとメロウなバラード、どちらもいける素晴らしいヴォーカルなので、あとはそのバランス配分ということになるでしょう。
ミックはバラード寄りに行きたい、ルーはロック寄りに行きたい、となかなか世の中うまくいかないものですね。
6曲目はSHE’S GOT TO KNOW(シーズ・ガット・トゥ・ノウ)。
この曲とラストのラヴァー・カム・バックだけがルー一人による作詞作曲だ。
どっしりとしたリズムの上に、ルーのエネルギッシュなヴォーカルが映えます。
中後半の、シャウト気味の盛り上がりのヴォーカルは、ロックヴォーカリスト、って感じで非常にいいです。
7曲目はARROW THRU YOUR HEART(アロー・スルー・ユア・ハート)。
ルー流のハードロックサウンドだ。
ギターを中心にハードなロックを聞かせてくれるが、非常にキャッチーでもある。
フォリナーでも聞けそうな、良く出来たロックチューンだ。
8曲目はUNTIL I MAKE YOU MINE(アンティル・アイ・メイク・ユー・マイン)。
これは、当時相当気に入って聞いていた楽曲だ。
やはりメロディがキャッチーで非常にいい。
そしてそれをルーが歌うと、素晴らしい楽曲に格が上がる。
とても素敵な曲になってます。
9曲目はCHAIN OF LOVE(チェイン・オブ・ラヴ)。
これも非常にフックのある楽曲だ。
ノリがいいメロディにルーのヴォーカルがピッタリである。
ラストはLOVER COME BACK(ラヴァー・カム・バック)。
これもルーのヴォーカルが冴えるバラードだ。
歌心のあふれるラヴソングでアルバムは締めくくられる。
ちなみに、この曲のギターソロは、旧友のベーシスト、ブルース・ターゴンによるものだ。
まとめとおすすめポイント
1987年リリースのLOU GRAMM(ルー・グラム)の1stソロアルバム、READY OR NOT(レディ・オア・ノット)は、ビルボード誌アルバムチャートで第27位を記録しました。
大ヒットとまでは行きませんでしたが、彼のやりたいことが何なのか、はっきりと見えるアルバムになっています。
やはり、ソリッドなギターオリエンティッドなロックスタイルを望んでいるのでしょう。
もちろん、バラードを歌わせても彼の歌声は天下一品でありますが、結局はバランスの問題と言うことになるでしょう。
フォリナーでは、バラードやシンセで埋め尽くされた楽曲が次第に増えてきてましたが、それに対するルーの答えがこのアルバムであると、言えるかも知れません。
フォリナーの初期のようなソリッドでかっこいいロックから、シンセ中心のメロウなものに変わりつつあるフォリナーのサウンド。
これをめぐって、ミックとルーはバトルを繰り返すわけです。
船頭多くして船山に登る、と昔から言われますが、やはり二人の才能豊かなミュージシャンがいるとなかなかまとまることも難しいのでしょう。
しかし、今回はルーは一人で思い切り自分のやりたいことを形にしてアルバムにしてくれました。
そしてそれは、非常に心地よく聴けるソリッドなバンドスタイルのものでした。
また、楽曲もどれもキャッチーで、コンポーザーとしての彼の才能もここに見つけることが出来ます。
でも、何よりも彼のヴォーカルの魅力がこのアルバムにはあふれています。
ルー・グラムの、ソリッドなヴォーカルに満ちたロックアルバム、入魂の充実した一枚となっています。
チャート、セールス資料
1987年リリース
アーティスト:LOU GRAMM(ルー・グラム)
1stアルバム、READY OR NOT(レディ・オア・ノット)
ビルボード誌アルバムチャート第27位
1stシングル MIDNIGHT BLUE(ミッドナイト・ブルー) ビルボード誌シングルチャート第5位、Mainstream RockチャートNo.1
2ndシングル READY OR NOT(レディ・オア・ノット) シングルチャートで、第54位、Mainstream Rockチャート第7位
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