爽やかハードポップ第3弾 NIGHT RANGER - 7 WISHES(セヴン・ウィッシーズ)
前作MIDNIGHT MADNESS(ミッドナイト・マッドネス)で、全米チャート第15位、100万枚の売り上げに達し、ある程度の成功を収めた、NIGHT RANGER(ナイト・レンジャー)。
今回も過去2作の方向性を引き継いだ、安定の爽やかハードポップ路線を聴かせてくれます。
今日は1985年リリースのNIGHT RANGER(ナイト・レンジャー)の3rdアルバム、7 WISHES(セヴン・ウィッシーズ)をご紹介したいと思います。
7 WISHES(セヴン・ウィッシーズ)の楽曲紹介
アルバムのオープニングを飾るのは、SEVEN WISHES(セヴン・ウィッシーズ)。
アルバムのタイトルソングでもあるこの楽曲は、勇壮なドラムで始まる、ヘヴィな楽曲だ。
少しずつ楽器が厚みを増していく感じがグッドですね。
そしてもちろんヘヴィといっても、歌はいつものキャッチーなメロディです。
相変わらずギターリフはザクザクしててかっこいい。
途中、カラーが変わってから入ってくるギターソロが、やはり相当キマっています。
ナイト・レンジャー節がたっぷり楽しめる楽曲になってます。
2曲目は、FACES(フェイセズ)。
イントロのケリー・ケイギーの怒涛のヴォーカルが響き渡ります。
Aメロが始まると、いつもの爽やかなハードポップの曲が始まります。
非常に心地よいサウンドですね。
ナイト・レンジャーらしい、ポップなハードロックを聴かせてくれます。
ギターソロはブラッド・ギルスのようです。
浮遊感のある、巧みなアーミングを用いた美しいメロディを奏でてます。
やはりこのくらいのハードロックは聴き易い。
結構万人受けしそうな、いい曲になっていますね。
3曲目はFOUR IN THE MORNING(フォー・イン・ザ・モーニング)。
なんともキャッチーな、非常に心地よい楽曲です。
シンセたっぷりで、ゆったり進んでいくポップロックです。
80年代だからこそのポップなキャッチーソングでしょう。
サビのコーラスの何と爽やかなことか。
この手のミドルテンポのポップソングを書かせたら、右に出るものはいないかもと思わせる、良く出来た曲になっています。
ギターソロは、ジェフ・ワトソンのようです。
コンパクトに、楽曲にピッタリの美しいソロを披露してくれてます。
この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、シングルのタイトルは”Four in the Morning (I Can’t Take Anymore)“となっています。
ビルボード誌シングルチャートで第19位、同誌Mainstream Rockチャートでは、第13位のヒットを記録しています。
4曲目はI NEED A WOMAN(アイ・ニード・ア・ウーマン)。
ミステリアスに少しづつ盛り上がっていく楽曲です。
ケリーの力強いヴォーカルが楽曲にぴったりだ。
サビはいつもどおりキャッチーに落ち着きます。
なかなかフックのあるメロディですね。
ギターソロは、ブラッド・ギルスです。
フロイド・ローズのギターを駆使して、さまざまな音を編み出しています。
アームアップ、ダウンはもちろんのこと、大きな音の揺らしから、繊細なビブラート、クリケット奏法など、アームを十分に使いきった素晴らしいソロを披露しています。
この曲も聴き所の多い楽曲になってます。
A面ラストはSENTIMENTAL STREET(センチメンタル・ストリート)。
Aメロ歌いだしの空耳で、“そういうわけならセンチメンタル・ストリート”でおなじみ!?の楽曲です。
イントロのドラムとシンセの組み合わせがいかにも名曲を予感させる作りになってて、それこそがエイティーズサウンドの典型でもあったりします。
ケリーのヴォーカルがキーボードと共に歌い始め、そして、次第にドラムとベースが入り、盛り上がっていきそしてサビの合唱へ。
この辺も典型的です。
でも典型的だからと言って誰でも出来るわけではありません。
やはりナイト・レンジャーはこの辺が非常に秀でているのだと思いますね。
また、ケリーの声が、こういうパワーバラードにピッタリなのです(シスター・クリスチャンでもそうだったように)。
そして、ブラッドのギターソロがまたも素晴らしい。
ゆったりとロングトーンを繊細なアーミングで揺らしながら美しいメロディを重ねていく。
そして一発の速弾きも完璧だし、最後のアームアップでどこまでも音色が上昇していくところなどは鳥肌ものになっています。
彼らの優秀なソングライティングのセンスと、絶妙なプレイテクニックなど、楽しめる要素満載の楽曲ですね。
この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャート第8位、Mainstream Rockチャートでは第3位と大ヒットを記録してます。
B面1曲目は、THIS BOY NEEDS TO ROCK(ディス・ボーイ・ニーズ・トゥ・ロック)。
久々のノリノリのハードロックチューンだ。
やはり、ロック・イン・アメリカが彼らの最高傑作だと思っている僕からすると、こういう曲をもっと高比率でアルバムに入れて欲しかったのは言うまでもありません。
このガツンとノレる疾走系のロックンロールこそ、彼らの真髄であり、彼ら自身もやりたいことだと信じているからです。
そういう点で、この曲は非常に楽しめます。
イントロのギターリフからたまらないではないですか。
ジャック・ブレイズのヴォーカルもばっちりはまっていますね。
サビは安定のキャッチーメロディで心地よい。
ギターソロもたっぷりと聴かせてくれてます。
やはり彼らは本当はハードロックバンドなのだということを、ふと思い出させてくれる名曲になっています。
この曲は1985年に公開されたアメリカ合衆国のSF映画、『エクスプロラーズ』(原題:Explorers)のサウンドトラックとして提供されています。
2曲目はI WILL FOLLOW YOU(アイ・ウィル・フォロー・ユー)。
ベースが強調された、少しシリアスな雰囲気で始まる楽曲です。
しかし、Bメロでは8ビートのロックへと変貌、一気に疾走系の楽曲へと変化します。
サビはやはりキャッチーで、コーラスも美しく決まっています。
ギターソロもこの不思議なノリにあったメロディを奏でてます。
全体的にドラマティックな楽曲に仕上がっています。
3曲目は、INTERSTATE LOVE AFFAIR(インターステイト・ラヴ・アフェア)。
この曲は1984年公開のアメリカ映画『りんご白書』(原題:Teachers)のサウンドトラック・アルバムで既に発表されていたものを手直ししたものです。
こうして見ると、当時ナイト・レンジャーの需要が非常に高かったことが窺われますね。
シンセばりばりで、確かにノリがよいのだが、ハードロックバンドとしてはちょっとやりすぎな感じもします。
デジタルポップとハードロックの融合といったらいいのでしょうか。
まあ、オブリやリフもナイト・レンジャーらしいのだが、全編でデジタルビートが鳴っているのが多少違和感が残ります。
でも、ノリが良いのでよしとすべきなんでしょう。
個人的にはなんか方向性が違うのではないかという気持ちが拭えません。
悪くはないです。
4曲目は、NIGHT MACHINE(ナイト・マシーン)。
ヘヴィなリフで始まるメタリックな楽曲です。
やっぱり前の曲より、こっちだと思います。
ハードロックバンド、という路線は外さずにこのようないい曲を作って欲しいのです。
そしてヘヴィでも、やはりサビはキャッチーなコーラスで、非常に快適に聴けますね。
ギターソロもとてもかっこいいです。
さらに、後半のサビの合唱、“welcome welcome welcome to the night machine”の部分はモトリー・クルーの、ヴィンス・ニールとトミー・リーが参加してるとのこと。
激しい楽曲に華を添えています。
アルバムラストは、GOODBYE(グッドバイ)。
ヘヴィロックに続く美しいジェフのアコギのアルペジオは、この曲への期待度を大きく高めるものとなっています。
これは非常に美しいバラードですね。
途中に入るギターソロもオブリも、すべてが楽曲を盛り立てるため、美しいメロディを奏でてます。
ドラムもいいタイミングで、入ってくるし、ラストのいったん終わりかと思いきや、の部分のドラム、非常にかっこいいです。
そしてアウトロのギターも非常に美しいです。
全く非の打ち所のないバラードです。
これじゃ、ナイト・レンジャーがバラードバンドと呼ばれてもしょうがないでしょう。
彼らの作るバラードが美しすぎるのです。
この曲はアルバムからの3rdシングルとしてカットされ、シングルチャート第17位、Mainstream Rockチャートで第16位のヒットを記録してます。
まとめとおすすめポイント
1985年リリースのNIGHT RANGER(ナイト・レンジャー)の3rdアルバム、7 WISHES(セヴン・ウィッシーズ)はビルボード誌アルバムチャートで第10位と初のトップ10入りを記録、アメリカで100万枚の売り上げとなりました。
今回はアルバムから3曲のシングルヒットが出たのですが、それは3つとも、ポップソングかバラード、ということになっています。
本来の西海岸からのハードロックバンド、という肩書きからは大きく外れるものですね。
そしてそれがまたヒットしちゃってるものだから、前作のシスター・クリスチャンなどと共に、ポップバラードのイメージがついてしまうのも致し方ない。
そのため、レコード会社はいっそう、そっち方面の楽曲を求め、本人たちはもっとハードなものを作りたい、というジレンマが生じてしまうのでした。
結局、そのイメージから脱却できないまま、この先セールスは伸び悩んでしまうことになるのです。
美しいパワーバラードを作れるがゆえに生じる、ジレンマ。
なんとも贅沢な悩みかとも思いますが、バンドとしてのアイデンティティに関わる部分なので、他人事ながら、大変だと思います。
個人的に言わせてもらえれば、やはりバラードも必要とはいえ、アルバムに10曲あれば、ハード:ソフトの比率は8:2がベストだと思います。
やはり、HM/HRファンは硬派なものを望んでます。
その中にキラリと輝くバラードがチラッと含まれると、相乗効果で、ハードもソフトもどちらもが魅力を増すと思われるのです。
その点ナイト・レンジャーの所属したレコード会社は、HM/HRファンを正しく見極めれなかったとしか言いようがありません。
このアルバムをピークに、バンドが失速していくわけですが、内容は決して悪くはありません。
ただ、ハードロック路線からポップに染まっている、というだけです。
今回のセヴン・ウィッシーズも、捨て曲なしのいい曲ばかりです。
ツインギターも、ツインヴォーカルも、それぞれが個性を十分に生かして楽曲に盛り込まれています。
ごりごりのハードロック、ヘヴィメタルをお望みの方にはおすすめできませんが、程よいハードポップを好まれる方には、断然おすすめです。
程よく心地よいロックを楽しめます。
チャート、セールス資料
1985年リリース
アーティスト:NIGHT RANGER(ナイト・レンジャー)
3rdアルバム、7 WISHES(セヴン・ウィッシーズ)
ビルボード誌アルバムチャート第10位 アメリカで100万枚のセールス
1stシングル SENTIMENTAL STREET(センチメンタル・ストリート) ビルボード誌シングルチャート第8位、Mainstream Rockチャート第3位
2ndシングル FOUR IN THE MORNING(フォー・イン・ザ・モーニング) シングルチャートで第19位、同誌Mainstream Rockチャートでは、第13位
3rdシングル GOODBYE(グッドバイ) シングルチャート第17位、Mainstream Rockチャートで第16位