テクニシャンたちの作り上げた極上のポップアルバム MR.MISTER - WELCOME TO THE REAL WORLD

MR.MISTERとの出会い





1985年、めちゃくちゃ暗い曲がヒットチャートを上がってきた。
サビもAメロBメロから少し転調するだけくらいのあまり濃淡のない曲だった。
第一印象に反して、チャートはぐんぐんと上がっていき、なんと全米チャートを制するのである。
それと共に僕も聞き込めば聞き込むほど、その味わいの魅力に引き込まれていきました。

 

バンド名はMR.MISTER(Mr.ミスター)、曲名はBROKEN WINGS(ブロークン・ウィングス)だ。
今回は、80年代に一瞬だけキラリと輝いたこのバンドを紹介したいと思います。

MR.MISTER(Mr.ミスター)とは

Mr.ミスターの中心人物、Richard Page(リチャード・ペイジ)(ヴォーカル&ベース)と Steve George(スティーブ・ジョージ)(キーボード)は元々スタジオミュージシャンで、バンドPAGES(ペイジズ)を結成していました。
PAGESとしては1978年から1981年までに3枚のアルバムを出しています。
が、ヒットにはつながりませんでした。

 

二人はアルバムによって商業的な成功を得ることはできませんでしたが、彼らはむしろスタジオミュージシャンや楽曲提供者として知られるようになります。

 

リチャードはケニー・ロギンスやサバイバー、REOスピードワゴンなど、数多くのミュージシャンのアルバムに参加しています。
スティーヴも同じく、アル・ジャロウ、ケニー・ロギンス、バリー・マニロウ他多くのアルバムに参加しています。

 

そしてペイジズ解散後、リチャードとジョージは新たなメンバーとしてギタリストのSteve Farris(スティーブ・ファリス)とドラムスのPat Mastelotto(パット・マステロット)を迎えてMR.MISTER(Mr.ミスター)を結成しました。

 

1984年にI WEAR THE FACE(アイ・ウェア・ザ・フェイス)でデビュー。
このアルバムからはHUNTERS OF THE NIGHT(ハンターズ・オブ・ザ・ナイト)がシングルチャートで57位という、小さなヒットを出しています。
が、アルバムは170位にとどまっています。
今聞いてみると、なかなかポップで、THE CARS(カーズ)を思わせるようなポップロックに仕上がっている。
これで170位とは厳しい業界だなと感じさせられます。

 

この直後、リチャードは大きな誘いを受けることになりました。
一つは、ボビー・キンボールの後釜としてTOTOのヴォーカリストにならないかと。
彼はこれを断り、結局ファーギー・フレデリクセンがTOTOのヴォーカルに決定、ISOLATION(アイソレイション)をリリースする。
リチャードのヴォーカルによるTOTOのアルバムも聴いてみたかった気もしますね。

 

もう一つはピーター・セテラの後釜としてCHICAGO(シカゴ)のヴォーカリストへの誘いだ。
リチャードはこれも断り、ジェイソン・シェフがシカゴ入り、CHICAGO18(シカゴ18)をリリース。
やはり、リチャードが入ったシカゴも聞いてみたかった気がします。

 

こんな大物バンドからのオファーを断るとは、リチャードはどんな神経をしてたんだろう。
しかし、彼は自分の作ったバンド、Mr.ミスターを優先した。
全くこの先の成功が約束されていないにも関わらずだ。

 

彼のバンドへの強い思いは確かに報われることになりました。
2作目のアルバムで、彼らは大ブレイクを果たしたのです。

 

今日は1985年リリースの、MR.MISTER(Mr.ミスター)の2ndアルバム、WELCOME TO THE REAL WORLD(ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールド)をご紹介したいと思います。

 

アルバムWELCOME TO THE REAL WORLD(ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールド)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、BLACK/WHITE(ブラック/ホワイト)。

 

アルバムはシンセの太いシングルロングノートで始まります。
そこにドラムとエレキギターが加わり、ロックな楽曲がスタートです。

 

全体の雰囲気は前作と変わらない感じではあるが、洗練された感じがしっかり感じられる。
シンセをフィーチャーしたあの80年代の音だ。
その合間にもエレキギターが鋭い音を聴かせる。
このバンドはテクニシャンの集まりなのだ。

 

2曲目はUNIFORM OF YOUTH(ユニフォーム・オブ・ユース)。

 

これもシンセがきらきらしていて心地よいポップなロックサウンドを楽しめます。
そんな中でエレキギターだけはソロでテクニックを披露している。
でも浮いているわけではありません。
絶妙なバランスを保っています。

 

3曲目はDON’T SLOW DOWN(ドント・スロウ・ダウン)。

 

これも引き続きキャッチーなポップロックだ。
リチャードのヴォーカルは十分に個性的で魅力的だが、それにスティーヴのコーラスとハモリが入ることで一気に質感が上がる。
この辺がとても気持ちよく聴けるMr.ミスターの隠し味と言えるだろう。

 

4曲目は、RUN TO HER(ラン・トゥ・ハー)。

 

これはリチャードの美しい声が魅力的なバラードとなっています。
シングルにはならなかったものの、エイティーズの屈指のバラードの一つと数えても良いのではないでしょうか。
美しいバラードを優しいシンセが彩っている。
しっとりと美しいバラードだ。

 

5曲目は、INTO MY OWN HANDS(イントゥ・マイ・オウン・ハンズ)。

 

これは勢いのあるポップロックソング、だ。
ドラムのはじけたビートが気持ちいい。
サビも爽やかなコーラスやハモリありで、非常に爽快な楽曲である。

 

B面1曲目はIS IT LOVE(イズ・イット・ラヴ)。

 

これも非常にキャッチーで、また勢いもあるいい曲だ。
ドラムが結構激しいが、全体のバランスは崩れず、ドラムが非常に印象的ですらあります。
また、シンセも効果的に用いられているので、とにかく気持ちよく聴ける楽曲だ。

 

この曲はアルバムからの3rdシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで、第8位、同誌Mainstream Rockチャートで第17位を記録しています。

 

7曲目、KYRIE(キリエ)。

 

これはよく出来たポップソングになっていますね。
静かに始まりますが、Aメロが終わる頃には、力強いドラムが入り曲を盛り上げる。
サビも一度聴くと忘れない、キャッチーなつくりです。
これも80年代を代表するポップロックということで間違いないです。

 

あと、ちなみに当時来日して確か「夜のヒットスタジオ」でこの曲を歌ったことを覚えています。
そのとき、歌ってる途中でマイクスタンドが倒れたのに、歌はそのまま最後まで聞けたのだ。

 

おお、これが口パクというものか、と感心したものだ。

 

当時、アメリカは国内だけでも時差があるので、バンド演奏などはすべて口パクで、生演奏はやらない、ということだったようだ。
それが完全生放送の夜ヒットだったために、そんな恥ずかしいミスがさらされてしまったということだ。
まあ、とにかく来日するほど大ブレイクしたMr.ミスターだったのです。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで、2週連続のNo.1、Mainstream RockチャートでもNo.1、Adult Contemporaryチャートで第11位を記録しています。

 

8曲目は、BROKEN WINGS(ブロークン・ウィングス)。

 

明るい曲から一転、どん底のようなベース音が際立つ楽曲です。
これはじわじわ来る名曲だ。
当時はまさか1位をとるとは思わなかったけど、こうして改めて聴くとやはり多くの魅力にあふれていますね。

 

サビのリチャードの高音域のヴォーカルがやはり印象的だ。
またディレイの聴いたエレキのリフも、全体を包んでいるシンセの音もすばらしい。
典型的なエイティーズソングと言っていいだろう。
前作までのチャートからすると、突然変異のように現れたこの曲はついに彼らに大ブレイクをもたらしたのでした。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートで2週連続No.1、Mainstream Rockチャートで第4位、Adult Contemporaryチャートで第3位を獲得しています。

 

9曲目はTANGENT TEARS(タンジェント・ティアーズ)。

 

落ち着いたポップソングだ。
シンセがポップ感を強調しています。
アルバムの中ではあまり目立たないが、イントロや間奏に見られるシンセとドラムによるアクセントがかっこいい。

 

アルバムラストは、WELCOME TO THE REAL WORLD(ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールド)。

 

軽快なポップソングで、彼ららしいキャッチーな楽曲だ。
これも佳作だ。
とても聴きやすい曲になっている。

まとめとおすすめポイント

1985年リリースの、MR.MISTER(Mr.ミスター)の2ndアルバム、WELCOME TO THE REAL WORLD(ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールド)は、ビルボード誌アルバムチャートでNo.1を獲得、アメリカで100万枚の売り上げを記録しました。

 

このアルバムは2枚の全米No.1ヒットを含み、アルバムチャートも全米No.1を獲得してます。
これまでの不遇はなんだったのかと思えるほどの快進撃です。

 

たいていテクニシャンが楽曲を作ると、どうしてもテクニック重視の曲だったり、これ見よがしのプレイがフィーチャーされて、一般的に受け入れられない、ということが生じえます。
このアルバムに関して言えば、テクニックと楽曲の良さのバランスが、80年代の音楽にぴったりあった絶妙な出来のような気がしますね。

 

前のアルバムもこれに近いのだが、今作のほうがより洗練され、エイティーズの流行の音になっていると思えます。
テクニックをバランスよく用いているという点では、YES(イエス)の90125(ロンリー・ハート)のようであり、シンセがふんだんに使われているという点ではTHE CARS(カーズ)のHEARTBEAT CITY(ハートビート・シティ)のようでもあります。

 

いずれにしても、エイティーズの流行にぴたっとはまったときに生まれたミラクルがこのアルバムだったと言えるかもしれません。

 

しかしミラクルは一度きりでした。

 

1987年リリースの次の作品GO ON…(ゴー・オン)は、シングルSOMETHING REAL(INSIDE ME/INSIDE YOU)(サムシング・リアル)が29位に終わり、アルバムも55位と、惨憺たる結果だ。
wikiによると、ALLMUSICというデータベースサイトが彼らのアルバムについてこのように回顧しています。

GO ON…(ゴー・オン)は彼らの前のアルバムと同じテーマ、文体、作品の質だが、唯一大きな違いはレコードセールスである。

僕もセールスが激減した理由がはっきりはわかりません。
僕が思うに、やってることは変わらないようだが、キャッチーさがだいぶ劣ってる気がしますね。
何が理由でそうなったかはわかりませんが、わずか一枚のアルバムだけで、力尽きてしまったかのようです。

 

結局そのまま這い上がることのないまま、バンドはもう一枚アルバムを作った後解散してしまいます。
そしてその後、メンバーはまたそれぞれスタジオミュージシャンとして活躍することになります。

 

もはや今の若者はMr.ミスターと言ったら、KARAを思い出す人のほうが多いいかもしれません。
いや、今はそのKARAすら知らない若者も出てきているのかもしれません。

 

しかし、僕は知っている。

 

1980年代に、Mr.ミスターというバンドがいて、ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールドという極上のポップアルバムを作ったことを。

 

一瞬輝いたミラクルをこのアルバムを通して体験して欲しいものです。

チャート、セールス資料

1985年リリース

アーティスト:MR.MISTER(Mr.ミスター)

2ndアルバム、WELCOME TO THE REAL WORLD(ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールド)

ビルボード誌アルバムチャートNo.1 アメリカで100万枚のセールス

1stシングル BROKEN WINGS(ブロークン・ウィングス) ビルボード誌シングルチャート2週連続No.1、同誌Mainstream Rockチャート第4位、同誌Adult Contemporaryチャート第3位

2ndシングル KYRIE(キリエ) シングルチャート2週連続No.1、Mainstream RockチャートNo.1、Adult Contemporaryチャート第11位

3rdシングル IS IT LOVE(イズ・イット・ラヴ) シングルチャート第8位、Mainstream Rockチャート第17位

最後まで読んでくださりありがとうございました。ランキングに参加しています。応援クリックよろしくお願いします!
↓ ↓ ↓


音楽ランキング
にほんブログ村 音楽ブログ 1980年代洋楽へ
にほんブログ村