栄光の終焉 最後のヒットアルバム FOREIGNER - INSIDE INFORMATION
前作プロヴォカトゥールからの歩み
1984年リリースのFOREIGNER(フォリナー)の5thアルバムAGENT PROVOCATEUR(プロヴォカトゥール)はビルボード誌アルバムチャート第4位、アメリカで300万枚を売り上げ、安定のセールスを記録しました。
アルバムからは、ゴスペルコーラスも起用した意欲作、I WANT TO KNOW WHAT LOVE IS(アイ・ウォナ・ノウ)がシングルとしてリリースされ、キャリア初のシングル全米No.1を達成。
フォリナーの栄光ある進撃は、まだまだ続くように感じられていました。
しかし、その輝かしい実績の裏では、メンバー間には確実に確執というものが生まれつつあったのです。
大ヒットアルバム、“4”の頃から、バラードやシンセサウンドに重きを置く、バンドの中心人物Mick Jones(ミック・ジョーンズ)。
そして、ギターやドラムが基調となるソリッドなバンドサウンドを望むヴォイス・オブ・フォリナー、Lou Gramm(ルー・グラム)。
この二人の望む音楽性の違いは、バンドにある種の緊張感をもたらしていたのです。
そして、アルバム、プロヴォカトゥールリリースに伴う9ヶ月に及ぶツアー終了後、それぞれの活動が目立つようになりました。
ミックはプロデューサーとして、VAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)の5150や Billy Joel(ビリー・ジョエル)の Storm Front(ストーム・フロント)の製作に携わっています。
そして、ルーは旧友と共にソロアルバム、READY OR NOT(レディ・オア・ノット)をリリース。
その内容は、ルーの新しい可能性を示す高いクオリティのものであり、ヒットを記録しています。
このような状態で、前作から3年ほどのインターバルが空いてしまうと、バンドには解散説がつきまとうことになってしまうのも世の常と言えるでしょう。。
実際、フォリナーも解散寸前のところまでいっていたようです。
ルーの1stソロアルバムリリースの直後には、フォリナーのニューアルバムのためのリハーサルは始まってはいましたが、ルーの去就がはっきりしなかったため、事実上停止状態に陥っていました。
しかし、ルーのアルバムのプロモーションツアーが終わると、ルーとミックは問題点を話し合い、解決し、再び共にアルバムのレコーディングに臨む事になったのです。
今回は前作ほど手の込んだことはやっていません。
シンプルでストレート、原曲のよさを小細工なしで表現する快作となりました。
今日は1987年リリースのFOREIGNER(フォリナー)の6thアルバム、INSIDE INFORMATION(インサイド・インフォメーション)をご紹介します。
INSIDE INFORMATION(インサイド・インフォメーション)の楽曲紹介
アルバムのオープニングを飾るのは、HEART TURNS TO STONE(ハート・ターンズ・トゥ・ストーン)。
これはルーとミックの共作作品だ。
やはり、この二人が組むと最高のフォリナー節が聴けます。
この武骨な感じのロックテイストに、スパイスのように加わるシンセサウンド。
ミックのギターリフはソリッドでかっこよく、ルーのヴォーカルはソウルフル。
これぞフォリナー、よくぞ帰ってきてくれた、という強い思いを感じられる。
力強いがキャッチーでもある楽曲だ。
この曲はアルバムからの3rdシングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートでは第56位にとどまったが、同誌Mainstream Rockチャートでは第7位と健闘した。
2曲目はCAN’T WAIT(キャント・ウェイト)。
どっしりとしたリズムに乗って、ルーの低音のヴォーカルが静かに歌い始める。
この部分も、シリアスな感じがあって、味わい深い。
が、サビでは一気にルーのヴォーカルがオクターヴ上がり、力強く歌い上げる。
この曲は、全体的にシンプルなアレンジで、ロックテイストが楽しめる。
ちょっと渋いが、やはりルーのヴォーカルゆえに、なかなかいい曲に仕上がってます。
3曲目はSAY YOU WILL(セイ・ユー・ウィル)。
サビメロからいきなり歌い出す、印象的なイントロを持つメロディアスな楽曲だ。
これはやはりメロディが秀逸だ。
この曲もルーとミックの共作である。
ソリッドというよりもポップ寄りの曲で、非常にキャッチーだ。
典型的な80年代サウンドが、今となっては懐かしいが、当時はとてもかっこよかった。
もちろん、今聞いても結構なクオリティを持つ楽曲であることは間違いないだろう。
実際、先行シングルとしてヒットしたことからも、リスナーはこのサウンドを待っていたことをはっきりと知ることができます。
1stシングルのこの曲は、シングルチャートで第6位、Mainstream Rockチャートでは見事4週連続No.1を獲得した。
4曲目はI DON’T WANT TO LIVE WITHOUT YOU(ウィズアウト・ユー)。
やはり、こんなバラードをみんな待っていたのだ。
静かにたんたんと進んでいくリズムに、美しいシンセがかぶさり楽曲を彩る。
そしてルーのヴォーカルがやはり味わい深い。
産業ロックと揶揄されようが、これは素晴らしいバラードに違いはない。
ミックがこうした路線に重きを置きたくなる気持ちも理解できる。
この曲はミックの作品だが、彼の作る美しいメロディにルーのソウルフルなヴォーカルが乗ったとき、曲の完成度は一気に高まるのだ。
とにかく素敵な雰囲気をかもし出すこの曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで第5位のヒット、そしてビルボード誌Adult Contemporaryチャートでは見事No.1を獲得して見せた。
5曲目はCOUNTING EVERY MINUTE(カウンティング・エヴリ・ミニット)。
非常にパワフルなロックンロールである。
イントロから、ギターリフがざくざく刻んでくる。
ギターオリエンティッドなロックサウンドで、きっとルーはこっちのほうが好みなのだろう。
しかし、この曲はルーとミックの共作であることからしても、やはりミックにもこういう曲を作る才能はあるのだ。
ただ、バラードにその焦点が傾いている、ということなのである。
前のAORソングから一気にこのノリに変わるので、非常に強烈な印象を受ける。
この辺のアルバムの中での配置もなかなかではないでしょうか。
僕にとってもかなりのお気に入りの楽曲となっています。
6曲目はINSIDE INFORMATION(インサイド・インフォメーション)。
シンセとギターリフの掛け合いが非常にかっこいい。
また、かっちり決まったドラムのリズム、Aメロ後はベースと共にドラムもしっかり入ってくる。
この辺の演奏が洗練されていてとってもクールな楽曲になってます。
サビもキャッチーで、その裏で鳴ってるシンセも非常にセンス良く決まってます。
さすがにアルバムタイトル曲だと恐れ入ります。
この曲はミックの作品だ。
やはり、ルーのヴォーカルの力量とミックの才能が合わさってのフォリナーだと改めて感じさせてくれます。
7曲目はTHE BEAT OF MY HEART(ビート・オブ・マイ・ハート)。
これはイントロが超かっこいいです。
アコギで静かに始まるのだが、静かなメロディが終わった瞬間、ヘヴィなギターがリフを刻み始め、そこにベースが加わり、最後にドラムスが入ってくる。
最高にかっこいいロックだ。
歌が始まると、演奏に負けないルーのはじけるようなヴォーカルが聴けます。
ミックも負けじとギターリフをしっかりと刻み続けます。
こんなソリッドでハードなテイスト、大歓迎です。
非常にパワフルで爽快なハードロックになっています。
8曲目はFACE TO FACE(フェイス・トゥ・フェイス)。
シンセの美しいイントロから始まる、これぞフォリナー、と言える楽曲だ。
ミドルテンポで、美しいメロディをたっぷり聴かせてくれます。
ルーのソウルフルなヴォーカルがいいのはもちろんのこと、シンセの音使い、メロディが素晴らしいです。
間奏はシンセの速弾きソロになっているところも新鮮です。
9曲目はOUT OF THE BLUE(アウト・オブ・ザ・ブルー)。
これまた美しいバラードです。
4曲目のウィズアウト・ユーよりも明るくメロディアスな出来になってます。
これはフォリナーのメンバー4人の共作になってます。
アルバム製作の直前までごたごたがあったとは思えない、素晴らしい楽曲に仕上がってます。
少し荘厳な感じが大げさに聴こえなくもありませんが、やはり良いものは良いのです。
そのような心の琴線に触れるような音作りこそ80年代サウンドの真骨頂ではないでしょうか。
隠れた名曲として輝いています。
この曲は4thシングルとしてカットされましたが、チャートインしませんでした。
そしてアルバムラストはA NIGHT TO REMEMBER(ナイト・トゥ・リメンバー)。
前作プロヴォカトゥールと同様、ロックなナンバーがアルバムの最後を締めくくってます。
疾走感あふれる楽曲で、ルーのハイトーンヴォイスが冴え渡ってます。
ギターリフにドラム&ベース。
ロックバンドの基本的な構成に適度なキーボード。
このシンプルでソリッドなロックこそ、フォリナーの本当の姿なのではないかと僕は思っている。
こうして非常に完成度の高いアルバムは幕を下ろします。
まとめとおすすめポイント
1987年リリースのFOREIGNER(フォリナー)の6thアルバム、INSIDE INFORMATION(インサイド・インフォメーション)はビルボード誌アルバムチャートで第15位、アメリカで100万枚のセールスを記録しています。
前作プロヴォカトゥールではかなり練りに練られた作りが見られましたが、比較すると、今回はかなりシンプルなロックを聴かせてくれています。
今回の製作の目標として、曲自体のクオリティの高さ、ロックンロールの持つ勢いと緊迫感をいかにアルバムに収めるか、という点だったようです。
そのため、スタジオ入りすると、7日間で14曲分のベーシックトラックのレコーディングを完了。
そしてオーバーダビングも極力抑えられています。
最終的に14曲の中から10曲が選抜され、非常に充実したクオリティの高いアルバムが出来上がりました。
まさに捨て曲なしの様相を呈していると思います。
どの曲もシングルカットできそうなクオリティを持っています。
直前に出されたルーのソロアルバム、READY OR NOT(レディ・オア・ノット)は非常にシンプルでソリッドなロックでした。
それに比較すると、やはりフォリナーならではのアレンジはしっかりと味付けとして楽しむことができます。
ただ、以前と比べるとシンプルになった、という感じでしょうか。
80年代に青春を過ごしたものとしては、このフォリナーの味付けがたまらなく心地いいです。
ルーのソロも、それはそれでかっこいいのですが、やはりルーとミックの才能のせめぎ合いが、ハイクオリティなアルバムになる秘訣なのでしょう。
このアルバム製作後も、進むべき音楽路線の違いでぶつかり合う二人ですが、その緊張感もこのアルバムのクオリティを上げるスパイスになっているに違いありません。
結局このアルバム発表の3年後の1990年にはルーはバンドを正式に脱退します。(後に少しだけ再加入しますが。)
そういう点で、このアルバムはフォリナーの栄光ある音楽活動の最終章となってしまいました。
80年代の味付けのされた、ソリッドでキャッチーなバンドサウンドを望む方には他のフォリナー作品と共におすすめいたします。
チャート、セールス資料
1987年リリース
アーティスト:FOREIGNER(フォリナー)
6thアルバム、INSIDE INFORMATION(インサイド・インフォメーション)
ビルボード誌アルバムチャート第15位 アメリカで100万枚のセールス
1stシングル SAY YOU WILL(セイ・ユー・ウィル) ビルボード誌シングルチャート第6位、Mainstream Rockチャート4週連続No.1
2ndシングル I DON’T WANT TO LIVE WITHOUT YOU(ウィズアウト・ユー) シングルチャート第5位、Adult ContemporaryチャートNo.1
3rdシングル HEART TURNS TO STONE(ハート・ターンズ・トゥ・ストーン) シングルチャート第56位、Mainstream Rockチャート第7位
4thシングル OUT OF THE BLUE(アウト・オブ・ザ・ブルー) チャート圏外