ジャケットで余計なケチがついた佳作 FOREIGNER – HEAD GAMES

前作からの流れ





1978年リリースの、FOREIGNER(フォリナー)の2ndアルバム、DOUBLE VISION(ダブル・ヴィジョン)はビルボード誌アルバムチャートで第3位、アメリカだけで今日までに700万枚を売り上げる、大ヒットを記録しました。

 

まさに上り調子のフォリナーでしたが、この後ベーシストのEd Gagliardi(エド・ガリアルディ)がクビにされます。
ヴォーカルのLou Gramm(ルー・グラム)はその理由について、エドがちょっと頑固すぎることを挙げています。
そして、バンドが作り出そうとしているものといつも合わないアイディアを持っていたみたいです。
それで、演奏の際も、自分のやりたい方法でプレイしたりもしていました。
そのためMick Jones(ミック・ジョーンズ)もたびたびセッションを止めて、彼のプレイを正さないといけないことがおこってたようです。
結果として、二人はエドの頑固さにうんざりすると共に、レコーディング自体もペースが遅れていく、という事態にまでなってしまい、クビにすることになりました。
代わりに、元スモール・フェイセスのRick Wills(リック・ウィルス)が新たなベーシストとして迎えられました。

 

そして次のアルバムは、クイーンの初期のアルバムのプロデューサーとしても有名なRoy Thomas Bakerロイトーマスベイカー)を迎え、ミックとIan McDonaldイアン・マクドナルド)との3人での共同プロデュースで制作されます。

 

大ヒットした2作に続いて作られたこの3作目も、引き続きフォリナーらしいソリッドでちょっぴりハードなロックを聴かせてくれるアルバムに仕上がりました。

 

では、今日は、1979年リリースのFOREIGNER(フォリナー)の3rdアルバム、HEAD GAMES(ヘッド・ゲームス)をご紹介します。

HEAD GAMES(ヘッド・ゲームス)の楽曲紹介

オープニングを飾るのは、DIRTY WHITE BOY(ダーティ・ホワイト・ボーイ)。

 

ルーとミック共作の、心地よい疾走感あふれるフォリナー流ロックンロールです。
イントロのギターリフから非常にかっこよいです。
8分のリフに16分のノリをいれるこのオープニングリフは痛快そのものだと思います。
ロックンロールの定番のリフも交えながら、疾走していく名曲ですね。

 

ミックはこの「ダーティ・ホワイト・ボーイ」はエルヴィス・プレスリーについての歌だと語っています。
エルヴィスは、音楽の形を完全に変えた「ダーティ・ホワイト・ボーイ」だったと言ってますね。
この曲は彼の残した遺産について歌っており、後に出てくるミック・ジャガーのようなミュージシャンに多大な影響を与えた、と言ってます。
そして、ミック・ジャガーもまた「ダーティ・ホワイト・ボーイ」だった、と。
エルヴィスが残したそんな偉大な音楽の道について歌った、つまりリスペクトを込めて「ダーティ・ホワイト・ボーイ」という言葉を使ったようです。
ところが一部のリスナーは人種差別主義を歌ったものと曲解したようです。

 

後にして思えば、そんな誤解もこのアルバムへのケチのつき始めだったのかもしれません。

 

とはいえ、フォリナーらしい、軽快で疾走感あふれるロックンロールでアルバムは幕を開けます。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第12位を記録しました。

 

2曲目は、LOVE ON THE TELEPHONE(真夜中の電話)。

 

この曲もルーとミックの共作です。
キーボードの使い方にCOLD AS ICE(つめたいお前)の雰囲気もある、これまた彼ららしいロック曲です。

 

やはり歌メロの哀愁感がたまらなくいいですね。
また、それを歌い上げるルーのヴォーカルがたまりません。
シャッフルのノリのよいリズムに乗せてキャッチーなメロディが耳を引きます。

 

一つ目の間奏ではミックのギターソロがかっこよく決まり、2つ目の間奏ではシンセソロがイケてます。
短い曲ですが、それぞれの楽器が見事なアンサンブルを聴かせてくれる佳曲となっています。

 

3曲目は、WOMEN(女たち)。

 

これはミックによる楽曲です。
シンプルなギターリフを重ねて少しづつ盛り上がっていくところがかっこよいです。
ベースも非常に前に出てきて曲を引っ張って盛り上げてます。

 

楽曲の盛り上げと共に熱を帯び、高音に上がっていくルーのヴォーカルも秀逸です。
ミックのギターリフは基本に徹してますが、その組み合わせでとても出来が良く聞こえます。
その辺がリフマスターとしての手腕だと思います。

 

地味にかっこよいロックンロールだと思います。

 

この曲はアメリカでの3枚目のシングルとしてカットされ、シングルチャートで第41位を記録しています。

 

4曲目は、I’LL GET EVEN WITH YOU(反逆の夜)。

 

ミックによる楽曲で、邦題とは真逆のイメージの爽やかなポップロックソングです。

 

この曲は全編に渡ってシンセがいい雰囲気を醸しだしていますね。
エレキはとってもシンプルなリフですが、シンセが心地よい世界観を演出しています。
バンドアンサンブルもフォリナーらしく、ルーが自由に感情を交えて歌うさまも、やはり彼らならではです。

 

アルバムの中ではとても清涼感のある存在で、そういう意味では目立った楽曲になっています。

 

5曲目は、SEVENTEEN(17(セヴンティーン))。

 

ルーとミックの共作曲で、これもかっこのいいロックソングになっています。

 

シンプルなギターリフが楽曲の骨としてしっかりと立っています。
この曲では後半にけっこうたっぷりとミックがエレキを弾きまくっています。
ハイテクではありませんが、計算されたメロディをしっかり弾ききっています。
ミックならではのメロディアスギターソロですね。

 

6曲目は、HEAD GAMES(ヘッド・ゲームス)。

 

ルーとミック共作の、アルバムタイトルトラックでB面はスタートです。

 

もう、このイントロはたまりませんよね。
あのデビュー曲のFEELS LIKE THE FIRST TIME(衝撃のファースト・タイム)にも通じる、爽やかで、何かが始まるようなワクワク感が秀逸です。
加えて、キラキラと輝くシンセサウンドも、絶品の出来となっております。
そのバックでゆったりとリズムを刻むベースとドラムも含め、まさにフォリナーの音、となっています。

 

この明るいイントロから、Aメロは一転ダークな曲調に変わりますが、この展開もクセになります。
そしてルーが歌い上げるキャッチーな歌メロ
もう、フォリナーはこれでなきゃ、っていう完璧な出来です。

 

文句なしの名曲と言っちゃってよいでしょう。

 

この曲はアルバムからの2枚目のシングルとしてカットされ、シングルチャートで第14位を記録しています。

 

7曲目は、THE MODERN DAY(モダン・デイ)。

 

この曲はミックの楽曲で、このアルバム中、唯一彼がヴォーカルをとっています。

 

曲としての出来はとてもよいです。
イントロのエレキリフに加わっていくベースやドラム。
またその後加わっていくシンセのキラキラ音。
高速ではありませんが、バンドのアンサンブルも感じられる、プチ疾走ソングです。

 

僕はフォリナーにおけるミックのヴォーカルは、あまり高く評価してません。
やっぱりフォリナーは、ルーのヴォーカルがあってこそ完成すると思っているからです。

 

でも、そんな固いことを抜きにすれば、この曲でのミックのヴォーカルは合ってますね。
軽快なノリで、アルバムの中にもしっくりと溶け込んでいます。
なかなかな佳曲だと思います。

 

8曲目は、BLINDED BY SCIENCE(科学の影に)。

 

ミックによる楽曲で、ちょっとした大作になっています。
そして、アルバム初のスローソング(バラードではないかな)になってます。

 

静かなシンセで始まり、抑え目にルーが歌い始めます。
間奏からドラムが入り、少しづつ盛り上がっていきます。
間奏では、シンセが厚みのある演奏を聴かせ、コーラスと共に楽曲をドラマティックに盛り上げていきます。

 

後半のルーの熱唱は、やはり歌の上手い彼ならではですね。
ラストは、劇的に終わっていきます。

 

9曲目は、DO WHAT YOU LIKE(灰色の別れ )。

 

イアンとルーの共作のアコースティックな香りのするアップテンポの曲です。
爽やかなアコギのストロークが印象的な楽曲ですが、そこに乗る歌メロのちょっぴりの哀愁感が意外にマッチしてよいです。

 

70年代アメリカのフォークロックのイメージもありつつ、ルーが歌えばやはりフォリナー節になりますね。
でも、やはりフォリナーの中でも、ちょっと異質な曲ではあります。
この曲も、ノリがクセになる感じの佳曲だと思います。

 

アルバムラスト10曲目は、REV ON THE RED LINE(レヴ・オン・ザ・レッド・ライン)。

 

シンセのAl Greenwood(アル・グリーンウッド)とルーとの共作です。

 

これも非常にメロディがよいですね。
まずはAメロからのルーの畳み掛けるようなヴォーカルが非常に耳に残ります。
やっぱり彼のヴォーカルはいいな、と思わせる熱唱です。

 

間奏のミックのエレキソロはいつもどおり楽曲を壊さない程度に、つつましくメロディアスに奏でてます。
サビはキャッチーで、これまたルーのヴォーカルが後半に向けて熱を帯びていきます。
なかなかドラマティックな名曲と思われますね。

 

熱く盛り上がりながらアルバムは幕を下ろします。

まとめとおすすめポイント

1979年リリースのFOREIGNER(フォリナー)の3rdアルバム、HEAD GAMES(ヘッド・ゲームス)はビルボード誌アルバムチャートで第5位を記録、アメリカで今日までに500万枚を売上げました。

 

デビュー以来安定のセールスを誇り、今回も十分合格点を取ってると思います。
しかし、当時は売上が300万枚ほどにとどまり、前2作を超えることができませんでした。

 

ルーはその理由の一つをアルバムジャケットと考えています。
確かに風変わりなシチュエーションの写真となっていますね。
男子トイレで、女の子が壁に書かれた電話番号を消している、という様子が切り取られた写真です。
まあ、今であればそんなに問題になることはない写真ですが、当時は一部問題視する声もあったようです。
そのため、一部のラジオ局では放送禁止処分となったところもあります。
またバイブルベルトとも呼ばれる、保守的なアメリカの中西部および南東部ではとりわけこのジャケットが物議を醸しました。

 

ルーによると、この写真は性的なものではなく、風変わりな状況を描いた単なるユーモアだとのことですが、多くの人はあまり気分良く見ることができなかったようですね。
それで、このアルバムジャケットがセールスを落とした原因の一つだったと彼は後に振り返っています。
まあ、前述のとおり、「ダーティ・ホワイト・ボーイ」も人種差別的と捉えられたりして、音楽以外のところでケチがついたアルバムとなってしまいました。

 

とはいえ、彼らのフォリナーらしいロックは健在です。
前の2作と遜色ないクオリティの楽曲であふれています。
スローな曲は1曲だけ。
あとは、ノリのよいロックンロールであふれた勢いのある楽曲がつまっています。

 

シングルもトップ10に入った曲はありませんが、シングルかそうでないかに関わらず、キャッチーで心地の良いロックが聴けます。
シンプルなギターリフに、シンセがキラキラと楽曲を色づけ、ルーの熱唱が加われば、完全にフォリナー節のできあがりです。
このアルバムでも、リフマスターとして、ミックがいい仕事をしてると思います。
ハイテクでないのに、非常に練りこまれたかっこいいロックギターです。

 

やはり最初の3作は、フォリナーのソリッドでかっこいいロックンロールが詰まっています。
バンドの勢いやアンサンブルもとてもクオリティが高いです。
アルバムジャケットの是非は置いといて、内容では十分に秀作と言ってよいこのアルバムもフォリナー好きには欠かせないアルバムと思います。

チャート、セールス資料

1979年リリース

アーティスト:FOREIGNER(フォリナー)

3rdアルバム、HEAD GAMES(ヘッド・ゲームス)

ビルボード誌アルバムチャート第5位 アメリカで500万枚のセールス

1stシングル DIRTY WHITE BOY(ダーティ・ホワイト・ボーイ) ビルボード誌シングルチャート第12位

2ndシングル HEAD GAMES(ヘッド・ゲームス) シングルチャート第14位

3rdシングル WOMEN(女たち) シングルチャート第41位