クオリティキープの名曲揃いの2作目 FOREIGNER - DOUBLE VISION(ダブル・ヴィジョン)
前作の大成功を受けての第2作目
1977年リリースの、FOREIGNER(フォリナー)のデビューアルバム、FOREIGNER(邦題:栄光の旅立ち)はビルボード誌アルバムチャートで第4位、アメリカで500万枚を売り上げる大ヒットとなりました。
英米混成のスーパーグループと呼ばれたバンド結成でしたが、その前評判をはるかに上回る成功を手にして見せました。
そしてアルバムの好セールスとともにツアーを重ねていきます。
約1年のツアー後には、カリフォルニア州オンタリオで開催されたCalifornia Jam IIという野外フェスでは20万人の聴衆の前でプレイしています。
そして、アメリカのツアー後には、ヨーロッパ、オーストラリア、そして日本などにもツアーで訪れています。
この勢いのまま2作目の制作に入ります。
いきなりデビュー作が大ヒットしたため、かなりのプレッシャーはあったと思われますが、すでに手堅いサウンドは1stで確立済み。
加えて今回は売れっ子プロデューサーのKeith Olsen(キース・オルセン)を共同プロデューサーに迎え、前作に遜色ないクオリティのアルバムを作り上げました。
では、今日は1978年リリースの、FOREIGNER(フォリナー)の2ndアルバム、DOUBLE VISION(ダブル・ヴィジョン)をご紹介します。
DOUBLE VISION(ダブル・ヴィジョン)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、HOT BLOODED(ホット・ブラッディッド)。
初期のフォリナーならではのかっこいいロックンロールです。
やはりイントロのギターリフが、非常に印象的でいいですね。
このシンプルながらも、フックのある素晴らしいギターがフォリナーサウンドの真骨頂ではないでしょうか。
ギタリスト、Mick Jones(ミック・ジョーンズ)のリフマスターぶりが見事に発揮されています。
この曲はミックの作曲で、彼のメロディメイカーとしての優れた素質もしっかりとうかがい知れますね。
また、このソリッドなロックンロールを、Lou Gramm(ルー・グラム)がこれまたかっこよく歌い上げると、フォリナーサウンドの完成です。
もちろん他のメンバーの貢献もあるとは思いますが、やはりこの二人の才能のぶつかり合いこそが、熱いフォリナーの名曲を生み出していったに違いありません。
さすがに70年代後半の作品ということもあり、プロダクションとしては古さを感じます。
ですが、今聞いても、十分にかっこよさの伝わる熱い名曲ではないかと思います。
この曲は、アルバムの先行シングルとしてリリースされ、ビルボード誌シングルチャートで第3位という大ヒットを記録しています。
2曲目は、BLUE MORNING, BLUE DAY(蒼い朝)。
この曲のBLUEは、misery(惨めな状態)のメタファー(隠喩)として用いられています。
邦題は単に「蒼い朝」としていますが、憂鬱な、というのがよりぴったりな意味のようですね。
このブルーな感じもミックがいい感じに楽曲で表現しています。
イントロのギターリフも、とても印象的でクールな感じになっています。
抑え気味に歌うルーの歌唱も、楽曲に合っていて素晴らしいです。
ブルーな雰囲気ながらも、サビはキャッチーで、よく出来た名曲です。
サビ裏のギターリフのカッティングもかっこいいですし、ソロも味があります。
この曲は3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第15位を記録しています。
3曲目は、YOU’RE ALL I AM(君は僕のすべて)。
この曲はピアノで始まる、静かなバラードです。
これもミックの作品で、彼のバラード作りも安定していいものを生み出してますね。
ギターソロもミックが甘いトーンで柔らかいメロディを奏でています。
ルーも、本人はハードなロックが好きなのですが、こんなバラードを歌わせるととてもいいですね。
なまじ彼の歌が(特にバラード)うまいもんだから、後々ミックがバラード偏重路線に向かってしまったのかもしれませんね。
4曲目は、BACK WHERE YOU BELONG(バック・ホエアー・ユー・ビロング)。
この曲はミック作曲の、ミックヴォーカル曲です。
ギターアルペジオから始まる、ソフトロック曲です。
郷愁を誘うような優しい雰囲気の楽曲ですね。
1stでもミックのヴォーカル曲があり、どちらかというと僕は否定的です。
フォリナーのヴォーカルはルーの固定のほうが、全体がまとまっていいと思うのです。
この曲に関しては、ルーには似合わない楽曲のような気がします。
どうしても、この曲を単体で聴くと、フォリナー曲とは思えないのは僕だけでしょうか。
曲は良いんですけどね。
5曲目は、LOVE HAS TAKEN ITS TOLL(ラヴ・ハズ・テイクン・イッツ・トウル)。
この曲はIan McDonald(イアン・マクドナルド)による楽曲です。
前曲のゆるやかな優しいミックのヴォーカルの後なので、ここではソリッドなルーのヴォーカルが一層際立ってます。
AメロBメロは、エッジのあるロックですが、サビはちょっとメロウな楽曲になっています。
このコントラストが悪くないですね。
間奏では恐らくイアンのサックスソロが加わってます。
6曲目(B面1曲目)はDOUBLE VISION(ダブル・ヴィジョン)。
ミック作曲のこの曲もしびれるほどかっこいいロックソングですね。
やはり、この曲のイントロのギターリフは、衝撃的にかっこいいと思います。
そんなに複雑なことはしていないのですが、やはりリフの構成が素晴らしいんでしょうね。
非常にスリリングでクールなリフが、この曲の印象度を一気に高めるイントロになっています。
やはりミックのリフマスターぶりが際立った名曲です。
歌メロに入ってからも、フォリナー流のロックンロールがかっこよいです。
ルーのヴォーカルも見事にはまってますしね。
サビはちょっとメロウな感じになってますが、その裏のキーボードプレイを含めて、とてもいい雰囲気がかもしだされてます。
また、サビ裏でのシンプルなギターリフも、変わらずかっこよいです。
非常にシンプルなのですが、フォリナーらしいハードエッジなロックソングです。
この曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャートで2週連続第2位を記録しています。
7曲目は、TRAMONTANE(トラモンテイン)。
この曲はフォリナー作品中、唯一のインストゥルメンタルです。
イアンとミック、そしてキーボードのAl Greenwood(アル・グリーンウッド)の3人による共作作品です。
結構賛否の分かれる楽曲ですね。
そもそもフォリナーにインストがいるのか、っていうところでしょう。
まあ、元King Crimson(キング・クリムゾン)のイアンなんかもいますので、ちょっとやってみたかったのでしょう。
イントロはアコギのストロークですが、次第に音数を増していき、アルの荘厳なシンセを中心に進んでいく楽曲です。
合間に、ギターソロプレイやキーボードプレイなどが絡んでいきます。
まあ、悪くない楽曲だと思います。
ただ、フォリナーのアルバムに入れるべき曲か、というと僕は微妙に感じますね。
僕のように、フォリナーのメインはルーのヴォーカルとミックのギターリフ、と感じている人にとっては蛇足かもしれません。
また、イアンやアルの過去のバンドにも関心のある人にとっては、なかなかの名曲に感じられるかもしれません。
ここは、何を求めるかによって大きく評価が分かれるのは仕方がないでしょう。
まあ、曲単体では、スケール感があって嫌いではありませんが、フォリナーのアルバムには要らないかな、というのが僕の個人の意見です。
8曲目は、I HAVE WAITED SO LONG(待ちくたびれて)。
これはミック作曲、ミックヴォーカル曲の2曲目です。
アコギのストロークによる弾き語りっぽいアコースティックな楽曲です。
とても優しい、心地の良いサウンドのいい曲だと思います。
ただ、何度も言いますが、やはりフォリナーのサウンドからは逸脱してる感じは否めません。
やはりルーのヴォーカルがないと、彼らの作品の中では浮いた感じになってしまうのはしょうがないでしょう。
でも、いい曲ではありますよ。
9曲目は、LONELY CHILDREN(寂しき子供達)。
いやいや、やはりこのイントロのソリッドなギター、ルーのエッジのあるヴォーカル。
これこそフォリナーでしょう。
これはミックの楽曲です。
どうしても、こっち系のロックっぽい方を僕はフォリナーに求めてしまいますね。
中盤ではシンセが効果的に混じってて、いい感じに楽曲を盛り立てています。
それでも、やはりギターリフが演奏の主役ですね。
リフマスターのミックの手腕が光ってます。
アルバムラスト10曲目は、SPELLBINDER(スペルバインダー)。
ミックの作曲による、じわじわと盛り上がっていくロックソングです。
ダークな落ち着いた雰囲気の出だしから、少しずつ盛り上がる楽曲に合わせて歌い上げていくルーのヴォーカルが秀逸です。
また、ミックのギタープレイも、ところどころで効果的にかっこいいフレーズを聴かせています。
ラストはギターソロプレイにシンセを交えて、プログレっぽい雰囲気も加わりつつエンディングを迎えます。
まとめとおすすめポイント
1978年リリースの、FOREIGNER(フォリナー)の2ndアルバム、DOUBLE VISION(ダブル・ヴィジョン)はビルボード誌アルバムチャートで第3位、アメリカだけで今日までに700万枚を売り上げる、大ヒットを記録しました。
チャート、セールス、共に前作を上回って見せたわけです。
やはりその最大の理由は、大ヒットした前作と同じ方向性でアルバムを制作したことが上げられるでしょう。
まさに、70年代後半に彗星のようにデビューしたスーパーグループは、音楽市場で多くのリスナーに愛されました。
そしてほぼキープコンセプトで2作目を出したのは、手堅い戦略だったと思います。
彼らの1st、2nd、共通して言えるのはやはり楽曲がよい、ということでしょう。
ほとんどの曲でミックが絡んでいますが、彼のコンポーザー、メロディメイカーとしてのセンスが、多くのリスナーの琴線に触れたものと思われます。
加えて、彼の奏でるシンプルながら非常にスリリングでかっこよいギターリフも、人々の耳にこびりついたに違いありません。
そして、バンドの顔であるルーの熱唱。
彼のエモーショナルなヴォーカルも、ミックの作る熱いメロディと相まって楽曲をさらに昇華させています。
あと、加えて他のメンバーのプログレっぽいタッチが程よく加味されて、フォリナーという新しいロックサウンドを生み出していると思われます。
70年代のロックなので、今聞けば当然古さは感じられますが、当時のロックのいい感じも味わえます。
ミックヴォーカル2曲とインストがちょっと浮いていますが、やはりフォリナー節のかっこいいロックサウンドが楽しめる名盤であることは間違いないでしょう。
チャート、セールス資料
1978年リリース
アーティスト:FOREIGNER(フォリナー)
2ndアルバム、DOUBLE VISION(ダブル・ヴィジョン)
ビルボード誌アルバムチャート第3位 アメリカで700万枚のセールス
1stシングル HOT BLOODED(ホット・ブラッディッド) ビルボード誌シングルチャート第3位
2ndシングル DOUBLE VISION(ダブル・ヴィジョン) シングルチャート2週連続第2位
3rdシングル BLUE MORNING, BLUE DAY(蒼い朝) シングルチャート第15位