エレキギターの新たな革命児 YNGWIE MALMSTEEN登場 ALCATRAZZ - NO PAROLE FROM ROCK’N’ROLL

YNGWIE MALMSTEENとの出会い





タイトルはALCATRAZZ(アルカトラス)のアルバムなので、リーダーのGraham Bonnet(グラハム・ボネット)について語るのが筋なのだろうが、僕は強烈な影響を受けたギタリストYNGWIE MALMSTEEN(イングヴェイ・マルムスティーン)に注目して、今回はこのアルバムを選ばせていただいた。

 

イングヴェイとの出会いは80年代中ごろだと思う。
当時は、まったく関心がなかった。
速弾きで有名なのは知っていたが、ただ速いだけといった周りの声だけしか聞こえず、ちょっと敬遠していたのだ。

 

それから時は進んで1998年、一つのアルバムに関心が向いた。
エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調『新世紀』
イングヴェイが第一ヴァイオリンをエレキギターに置き換えて作った協奏組曲だ。
そしてその実際の様子を収めたDVDが出ていたので、クラシックにも関心があった僕は、オーケストラとエレキギターの融合とはどのようなものだろうと、購入して視聴してみた。

 

それは僕の予想を遥かに上回っていた。
こんなにエレキギターがオーケストラと相性があうとは思っていなかったし、何よりも彼の速弾きプレイに魅せられてしまったのである。

 

それで、遡ってこのアルカトラスのデビューアルバムを聴くことになったという次第だ。

ALCATRAZZ結成とYNGWIE MALMSTEENの加入

イングヴェイはスウェーデン出身のギタリストである。
あの速弾き専門のシュラプネル・レコーズのMike Varney(マイク・ヴァーニー)にデモテープを送ったのがきっかけで、19歳のときに単身LAに渡り、地元のSTEELER(スティーラー)というハードロックバンドに加入。
一枚アルバムを出し12回ほどショーに出て脱退。

 

しかしそのアルバムではすでにその後のイングヴェイ流のギタースタイルは確立されていた。
フィンガリング、ピッキングのスピードは既に周りからかけ離れた突然変異的なものだった。

 

そしてその頃、Michael Schenker Group(マイケル・シェンカー・グループ)を解雇されたグラハム・ボネットが新しいバンドを結成する。
まだバンド名も決まっていないところに声がかかってイングヴェイが加入することになる。
その時点で曲もない状態だったのが幸いして、19歳だったイングヴェイは30代半ばのメンバーたち相手に楽曲製作の主導権をとった。
もともと曲は書きたかったし、すでにアイディアもたっぷりあったので、彼はほぼ全部の楽曲をグラハムと共に作ることになった。

 

そしてついにバンド名はアルカトラスに決まり、アルバムを制作します。

 

というわけで今日は1983年にリリースのALCATRAZZ(アルカトラス)の1stアルバム、NO PAROLE FROM ROCK’N’ROLL(ノー・パロール・フロム・ロックン・ロール)をご紹介します。

NO PAROLE FROM ROCK’N’ROLL(ノー・パロール・フロム・ロックン・ロール)の楽曲紹介

オープニングは、ISLAND IN THE SUN(アイランド・イン・ザ・サン)。

 

なんとも80年代的な爽やかな楽曲になっています。
キャッチーな楽曲だが、グラハムのヴォーカルはいきなり最初から熱い
シンセも用いて、普通のポップロックソングのようだが、ギターソロは違った。

 

クリアな、玉を転がすような流麗なソロだ。
ストラトを自在に操り、展開もしっかりと組み立てられたすばらしいギターソロを披露して見せている。
高速速弾きになっても音の粒はキラキラとクリアにはっきり聞こえてくる
この速さは、当時は画期的なものだった。

 

一曲目でいきなりイングヴェイはその実力を披露したのである。
この曲はシングルとしてカットされ、チャートには登場していないが、PVも作られていて、イングヴェイのギターソロの一部を見ることができる。
この曲で、一躍彼は速弾きギタリストとして時の人となったのだ。

 

2曲目はGENERAL HOSPITAL(ジェネラル・ホスピタル)だ。

 

少し地味に思えるかもしれない楽曲です。
それでも相変わらずグラハムの熱唱が熱すぎます。
そしてこの曲はイントロからのギターリフがかっこいい。
ギターを持って真似したくなる優れたリフだ。

 

またギターソロがたまらない。
このとき弱冠20歳のイングヴェイがこれを弾いていたのだ。
これを聴くとわかると思うが、ただ速いだけではない。
きちんとソロの展開がかっちりと構築されたメロディアスなものだ。
そしてその高速のメロディ一音ずつきっちりとクリアに聞かせているところが彼のすごさだ。
最後の下降からの上昇フレーズは鳥肌が立つほど美しい。

 

3曲目は、JET TO JET(ジェット・トゥ・ジェット)。

 

イントロのギターリフが超かっこいい。
疾走感あふれるハードロックである。
また、グラハムの魂のこもったヴォーカルも魅力の一つだ。
高音域までしっかりと歌い上げている、力強い歌だ。

 

しかし、やはり注目はイングヴェイのギターソロだ。
初期のイングヴェイサウンド、このクリアな音色はいまだに多くの人に好まれている。
歪ませすぎず、音の分離がしっかりしていて、速いのにぐちゃぐちゃってなってない。
きれいに音が聞こえて来るのだ。
素晴らしいソロだ。

 

4曲目はHIROSHIMA MON AMOUR(ヒロシマ・モナムール)。

 

特に日本人になじみの深い楽曲です。
歌詞の内容は反戦歌のようだが、いろいろ誤解も生まれてたりして、物議をかもした楽曲だ。
内容はともかく、ロックソングとしては、素晴らしい出来になっていると思う。
イントロのイングヴェイのプレイは、ヴィヴラートも十分に効かせた悲しいメロディを見事に表現している。
曲が始まると、ブラッシングを用いて、キレのよいバッキングで楽曲を支えている。
その上で歌うグラハムはやはり熱い。
悲痛な叫びが反戦の強い思いを表現しているようだ。

 

そしてやはりイングヴェイのギターソロはまたも大注目だ。
これも、しっかり作りこんだソロと思われる。
楽曲の展開にあわせて、見事なまでに構築されている。
そして当然のように速いフレーズが流れるように奏でられる。
この滑らかでクリーンなソロはやはり驚きだった。
グラハムのヴォーカルと、イングヴェイのバッキング、ソロがうまく融合して素晴らしい楽曲が生み出されたと思う。

 

5曲目はKREE NAKOORIE(クリー・ナクリー)。

 

これはクラシカルな要素漂う壮大な楽曲だ。
イントロのキーボードがクラシカルな旋律となる主題を提示している。
独特な世界観が披露されている中で、ギターもそれに合わせてクラシカルなフレーズをたっぷりと披露されている。
現代ギターのテクからすると、この速さは一般的ではあるが、1983年という年にこの速さをこのクリアさで出せたのが奇跡的だ。
そして、今でもこのときのイングヴェイのサウンドは羨望の目で見られるのだ。
ロックギターの革命児という表現も決して大げさではない。

 

6曲目はINCUBUS(インキューバス)。

 

アルバム中唯一のインストゥルメンタルである。
イントロは初のアコギによるプレイだ。
途中からエレキに変わる。
前曲からのアウトロだとか、次の曲のイントロだとかいろんなとらえ方があるが、僕にはちょっとよくわからない。
さほどギターテクを前面に押し出しているわけでもなく、アルカトラス、というバンドにこれはいるのかな、って思ってしまったりもします。(個人の感想です。)

 

7曲目はTOO YOUNG TO DIE ,TOO DRUNK TO LIVE( トゥー・ヤング・トゥ・ダイ、トゥー・ドランク・トゥ・リヴ)。

 

キャッチーな楽曲で、普通にかっこいいロックソングだ。
そしてギターソロは後に練習フレーズとしてもよく取り上げられることになった3連の3本弦スウィープから始まる。
ゆったりしたリズムなのに、この3連符をうまくテンポに乗せるのは難しい。
こんなフレーズを考え出したのもすごいし、きっちりテンポどおり弾きこなしているのもすごい。

 

3連符のあとは結構弾きまくっている。
ここのソロは、アドリブっぽい。
しかし、この人のすごいところは、きちんと正しいタイミングでソロを弾き終える絶妙なタイム感だ。
ライヴでも、自由に弾きまくってもきちんと楽曲に戻ってくるのだ。

 

8曲目はBIG FOOT(ビッグ・フット)。

 

イントロのギターリフはかっこいいが、曲全体は怪しい雰囲気だ。
ギターソロのスタートは2本弦スウィープの練習問題によく使われたものだ。
これもテンポをあわせるのは結構難しい。
その後のソロでもやはり弾きまくっている。
若いイングヴェイは、とにかく自分を世界にアピールしたかったに違いない。

 

9曲目は、STARCARR LANE(スターカー・レーン)。

 

ちょっとヒロシマ・モナムールに似てるところが多いが、キャッチーないい曲である。
イントロのソロギターの美しいことといったらない。
流れるようなメロディをさらっと弾いてくれている。
ギターソロもやはり弾きまくっている。
もうこのクリアさには脱帽である。

 

アルバムラストはSUFFER ME(サファー・ミー)。

 

静かなアルペジオに乗せてグラハムが歌い始める。
やはり熱唱である。
その間でイングヴェイもオブリを入れてくる。
ギターソロは、始まると、最後まで魂のプレイを聴かせてくれる。
バラードの雰囲気に良くあった、きちんと考えられたフレーズたちだ。
こんなエモーショナルなプレイを聞かせるとはやはりイングヴェイは天才であったか。

 

こうして強く美しいバラードで、アルバムは幕を閉じます。

まとめとおすすめポイント

1983年にリリースのALCATRAZZ(アルカトラス)の1stアルバム、NO PAROLE FROM ROCK’N’ROLL(ノー・パロール・フロム・ロックン・ロール)はビルボード誌のアルバムチャートでは第128位にとどまった。
しかし、このバンドの擁した新人ギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンの存在は大きくフィーチャーされ、彼の今後の素晴らしいキャリアの第一歩となるのである。

 

数年前にEdward Van Halen(エディ・ヴァン・ヘイレン)の登場によってロックギターの世界にジミ・ヘンドリックス以来の革命が起きたと言われたが、ほんのわずか後に今度はイングヴェイによって次の革命が起こされたのである。
イングヴェイの音楽的な背景にはクラシック音楽がある。
バッハ、ヴィヴァルディ、パガニーニなど、数多くのクラシックの先人たちから影響を受けたと公言している。
それと同時に、エレキを始めるきっかけをくれたジミ・ヘンドリックスのほか、リッチー・ブラックモアやウリ・ジョン・ロートなどからはクラシカルなフレーズやスケール使いに関して影響を受けたと語っている。

 

そのようなクラシカルなバックグラウンドからの独特のスケールの使用や、水晶のようだと形容される、ストラトギターによる音色、そして一気に周りのギタリストを出し抜いた驚異的な速弾き、など多くの点で、ロックギターの規準を塗り替えてしまったのだ。

 

ただ、あまりの速さゆえに、良い曲やメロディを書く、というところがすっぽり抜け落ちて、ただ速いだけ、という風に安直な評価をされている部分もある。

 

しかし、彼もそこのところは良くわかっている。
「メロディアスではなく単に速いというだけのスピードはばかげてる。俺にとって大切なのは常にメロディアスであるってことなんだ。」と語っている。

 

そのことはこのアルバムをきちんと聴けば容易にわかるだろう。
確かに速いフレーズは満載である。

 

しかし流麗なよどみなく流れるメロディはもはや芸術の域に達している。
そこには一音一音をきっちりクリアに聞かせる丁寧さがある。
また、曲にあわせた、時に激しく、時に叙情的なメロディがある。
ヴィヴラートも、非常に深い揺らぎを与えることで単に速いだけでなく感情を揺さぶるものへと昇華している。

 

ここには天才が踏み出した第一歩が刻まれている。
今から30年以上も前にもたらされたイングヴェイの革命は、既に遠い過去のこととは言え、鮮烈な印象を与えてくれる。
ロックギターの歴史を語る上で外せないこのアルバムをぜひとも鑑賞して欲しいと思います。

 

蛇足ながら付け加えさせていただければ、グラハム・ボネットの熱いヴォーカルもいいですよw

チャート、セールス資料

1983年リリース

アーティスト:ALCATRAZZ(アルカトラス)

1stアルバム、NO PAROLE FROM ROCK’N’ROLL(ノー・パロール・フロム・ロックン・ロール)

ビルボード誌アルバムチャート第128位

1stシングル ISLAND IN THE SUN(アイランド・イン・ザ・サン) ビルボード誌シングルチャート圏外

 

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