新生VAN HALENの渋い第2弾 OU812

ダイアモンド・デイヴへの返答





1986年、ヴァン・ヘイレンを脱退したDAVID LEE ROTH(デヴィッド・リー・ロス)はEAT ‘EM AND SMILE(イート・エム・アンド・スマイル)というアルバムを制作し、200万枚のヒット。
このタイトルは、古巣のVAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)への当て付けとして付けられたタイトルで、「奴らを食って、微笑んで」という意味です。(当然奴らとはヴァン・ヘイレンのことですね。)

 

既に同じ年に5150というアルバムで全米No.1を獲得していた、SAMMY HAGAR(サミー・ヘイガー)加入後のヴァン・ヘイレンは、1988年ニューアルバムをリリースします。
タイトルはOU812
これはOh, you ate one, tooを略した表現で、“お前もそれを食ったのか”、という意味で、デヴィッド・リー・ロスへの回答としてアルバムタイトルとして付けられました。

 

すでに新たな魅力を生み出した新生ヴァン・ヘイレンがどのようなアルバムを作ってきたのか期待が高まる中、先行シングルBLACK AND BLUE(ブラック・アンドブルー)がリリース。
それは非常に渋い、ブルージーな楽曲であり、世間を驚かせましたし、僕も驚きました。

 

では今日は1988年リリースのヴァン・ヘイレンの8thアルバム、OU812を紹介したいと思います。

アルバムOU812の楽曲紹介

アルバムのオープニングを飾るのはMINE ALL MINE(マイン・オール・マイン)。

 

まずは疾走感あふれるハードロックソングで幕開けです。
シンセが全体にいい味付けをしています。
が、以前の底抜けに明るい雰囲気はなくなってますね。
結構シリアス路線を突っ走っている楽曲です。
やはりサミーの声に遊びがないというか、なんかマジなのです。(悪い意味で言ってるわけではないです、はい。)
ギターソロは相変わらずキレていますね。
シンセのほうがバッキングより目立ってしまっていますが、その分エディはギターソロを見事に弾きまくっています。
エディの特徴が詰め込まれたスリリングなギターソロを披露しています。

 

2曲目はWHEN IT’S LOVE(ホエン・イッツ・ラヴ)。

 

いきなりシンセたっぷりのパワーバラードとなってます。
サミーの熱唱がとても美しいですね。
それとともにベースのMichael Anthony(マイケル・アンソニー)によるコーラスが美しいです。
ギターソロでエディは弾きまくらず、タメをたっぷりとったエモーショナルなソロに徹しています。

 

この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートでは第5位、同誌Mainstream Rockチャートでは堂々のNo.1を達成しています。

 

3曲目はA.F.U. (NATURALLY WIRED)(A.F.U.)。

 

ヴァン・ヘイレンらしい疾走感のあるドライヴィングロックとなっています。
ドラムから入るイントロに、見事なギターリフが乗ってます。
ギター一本でこの世界を作り出すエディはやはり天才だと思えますね。
そしてサミーもこういう曲はさすがにうまく歌い上げてます。
また、ヴォーカルの裏で聞こえるエディのバッキングやオブリにも要注目となってます。

 

また間奏前のサミーのシャウトとそこに絡むエディのへヴィな刻みリフは非常にスリリングです。
そしてそこからのギターソロへの流れも秀逸。
加えて、サミーの声とユニゾンで入るギターソロ、がかっこよすぎる。

 

4曲目はCABO WABO(カボ・ワボ)。

 

前作で言えばSUMMER NIGHTSに相当するような、ゆったりサマーソングです。
ビーチソングはデヴィッド・リー・ロスがお手の物でしょうが、サミーのも悪くないです。
結局アメリカ人はビーチで歌うのって似合う人種なんでしょうね。
またマイケルのコーラスも爽やかさを演出しています。
長いギターソロも、そんなにハイテクではないですがいい感じになってます。
そして、ちょっと聞き逃しそうになりますが、イントロや随所に出てくるエディのギターリフは、やはりキラリと光るものがありますね。
サウンド的にヴァン・ヘイレンそのものですが、やはりヴォーカルが変わるとこんなに雰囲気が違ってくるのか、という見本のような曲になってます。

 

5曲目はSOURCE OF INFECTION(ソース・オブ・インフェクション)。

 

イントロのタッピング、曲全体を派手に盛り立てるアレックスのドラムなどから、サミー版HOT FOR TEACHERとの呼び声高い、疾走感あふれる楽曲です。
サミーのハイトーンヴォイスが冴えてます。
テンション高いまま一気に4分を走り抜けます。
ギターに関して言えば、途中のリフがめっちゃかっこいいです。
そして特筆すべきは何より、3度のギターソロでしょう。
一つ目のメインのソロはエディが高速で駆け抜け、
二つ目、三つ目のソロは短いが、コンパクトにまとまっており、楽曲の疾走感をさらに際立たせています。
3つもギターソロのある曲って他にあるでしょうか。
ヴァン・ヘイレンらしい、超絶かっこいい楽曲に仕上がっています。

 

6曲目は、FEELS SO GOOD(フィールズ・ソー・グッド)。

 

またシンセメインのポップソングです。
ゆったりとしたリズムで進む、非常に聴いてて心地よい楽曲となっています
サミーも、がなりたてるのではなく、余裕のあるヴォーカルを聴かせてくれてます。
また、マイケルのコーラスも、ヴァン・ヘイレンらしさを演出しています。
そしてシンプルな曲の中で光るエディのギタープレイ。
でも、やはり迫力に欠けるといえば欠けるのかな、という感じですね。
ヴァン・ヘイレンの特徴を含んではいるが、ヴァン・ヘイレンがやる必要があるのか、とも思えるポップな曲です

 

この曲はアルバムからの4thシングルとしてカットされ、シングルチャートは第35位、Mainstream Rockチャートでは第6位を記録しています。

 

7曲目はFINISH WHAT YA STARTED(フィニッシュ・ホワット・ヤ・スターテッド)。

 

今までにこの手の楽曲はなかったはずですね。
これは、アルバム中の掘り出し物とも言える、いい出来です。
最初から最後までクリーントーンのギターを聴かせるエディ
実に渋かっこよいですね。
HR/HMの世界では、エレキは歪みが全てのような感じがありますが、この曲を聴くと、それだけでもないことに気付かされます。
楽曲も、ブルースに基づいたウェストコーストロックのような、なんともいえない魅力のある曲になっています。
また、サミーのヴォーカルがとてもうまい。
特に低音で歌い上げるところなんか激シブです。

 

3rdシングルとしてカットされたこの曲は、シングルチャート第13位、Mainstream Rockチャートでは第2位まで上昇するヒットとなりました。

 

そして次はBLACK AND BLUE(ブラック・アンドブルー)。

 

先行シングルとして初めて聴いたときは、なんか地味だと思いましたが、意外にじわじわ好きになっていった楽曲です。
まったりとねちっこいリズムで、ブルージーな渋い曲に仕上がっています。
その割りにギターソロはたっぷりと派手にフレーズを繰り広げてます。
とにかく、聴けば聴くほど味が出る、するめソングではないでしょうか。

 

この曲はシングルチャートでは第34位と曲と同じく地味なチャートアクションでしたが、Mainstream Rockチャートでは何とNo.1を獲得しました。

 

9曲目はSUCKER IN A 3 PIECE(サッカー・イン・ア・スリー・ピース)。

 

エディの派手なギターによるイントロから始まるロックソングです。
サミーのヴォーカルが伸びやかで爽やかな印象を与えています。
バッキングもオブリもヴァン・ヘイレンサウンドそのもので、非常に心地よく聴けますね。
ソロはいまいち目立ちませんが、楽曲全体のつくりは非常にらしい作りでいい曲だと思います。

 

アルバムラストは、A APOLITICAL BLUES(アポリティカル・ブルース)。

 

これはLITTLE FEAT(リトル・フィート)の楽曲のカヴァーです。
こんなブルージーな楽曲もヴァン・ヘイレンにはあまりないのではないでしょうか。
これはやっぱりサミーの影響なのでしょうね。
サミーのヴォーカルは非常に合っててよいです。
そしてこてこてのブルースをヴァン・ヘイレンなりにプレイして見せてます。
こうして、地味にアルバムは終わります

まとめとおすすめポイント

1988年リリースの新生ヴァン・ヘイレンになって2作目、通算8作目のスタジオアルバム、OU812全米No.1を獲得し、アメリカで400万枚を売り上げます。
これは数字的には成功と言ってよいでしょう。

 

しかし、ヴァン・ヘイレンのアルバムの中ではいまひとつ評価は高くありません
やはりブルースの影響を多大に受けた内容の楽曲が多く見られたというのが一つの理由ではないでしょうか。
ブルージーな曲でも、よくよく聴けばヴァン・ヘイレンらしいし、次第に好きになってもきます。
ただ、アルバム全体を見てみるに、地味な印象があるのは否定できません

 

超のつく根アカだったデヴィッド・リー・ロスの時代と比べるまでもなく、前作5150と比べても、派手さは薄れ、かなり控えめで地味な印象であります。
アルバムジャケットも、モノクロで、地味って言えば地味です。(かっこいいけど・・・)
まあ、この時は彼らはこのようなブルージーなサウンドをやってみたかったのでしょう。

 

で、結論として、地味が悪いわけでもなく、僕は好きなアルバムです。
粒ぞろいのいい曲がいっぱい入っています。
エディのプレイもしっかり収められてますし、サミーのヴォーカルも冴えています。
アレックスのドラムも忙しくビートを刻んでますし、マイケルのコーラスも楽曲を引き立ててます。

 

ただ、地味なだけです。

 

地味かっこいい、いや、渋かっこいいアルバム、きっと一聴の価値はあると思いますよ。

チャート、セールス資料

1988年リリース

アーティスト:VAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)

8thアルバム、OU812

ビルボード誌アルバムチャートNo.1 アメリカで400万枚のセールス

1stシングル BLACK AND BLUE(ブラック・アンドブルー) ビルボード誌シングルチャート第34位、同誌Mainstream RockチャートNo.1

2ndシングル WHEN IT’S LOVE(ホエン・イッツ・ラヴ) シングルチャート第5位、Mainstream RockチャートNo.1

3rdシングル FINISH WHAT YA STARTED(フィニッシュ・ホワット・ヤ・スターテッド) シングルチャート第13位、Mainstream Rockチャート第2位

4thシングル FEELS SO GOOD(フィールズ・ソー・グッド) シングルチャート第35位、Mainstream Rockチャート第6位

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