エイティーズ全盛期に泥臭い突然変異登場 THE GEORGIA SATELLITES – GEORGIA SATELLITES(ジョージア・サテライツ)
時代錯誤(!?)の本格ブルーズロックバンド誕生
僕が80年代に、カラフルなエイティーズサウンドにはまってるときに、突如、超古く感じる、泥臭いサウンドがラジオで流れてきました。
とても楽しいロックンロールで、やっぱりアメリカの古いロックもなかなか楽しいものだな、ととても好感を持って聴いたのを覚えています。
その時は、オールドロックが懐メロとしてラジオでかかったくらいにしか思っていませんでした。
まあ、イメージで言えば、80年代に、過去のビートルズを聴いて、やっぱりいいよね、って思う感じです。
ところが、何と、ここで聞いたのは、KEEP YOUR HANDS TO YOURSELF(キープ・ユア・ハンズ)という新曲!!だったのです。
えっ、新曲でこんな古く、泥臭い曲が出るの?やっぱアメリカは奥が深い、なんて思っていると、実はこの曲は、これをやってるバンドのデビュー曲だっていうから、さらなる衝撃を受けてしまいました。
バンド名はTHE GEORGIA SATELLITES(ジョージア・サテライツ)。
PVで見る限り、僕が思っているよりすごく若くてそれもまた驚きです。(かなりなベテランを想像してましたw)。
というわけで、80年代後期に突如現われてきらめきを放った、泥臭さ満点のサザンロックバンド、ジョージア・サテライツについて触れてみたいと思います。
このバンドの中心人物となるのが、ヴォーカル兼リズムギターのDan Baird(ダン・ベアード)です。
彼はアトランタでギタリストとして活動していましたが、1980年にギタリストのRick Richards(リック・リチャーズ)らと共に、Keith and the Satellites(キース&ザ・サテライツ)というバンドを結成します。
このバンドで、メンバーチェンジを繰り返しながら、南部のローカルバーでプレイを続けていきます。
で、バンド名の一部となってたベーシストのKeith Christopher(キース・クリストファー)もいなくなったこともあり、最終的にはバンド名はジョージア・サテライツで落ち着きました。
そして、プロデューサーとして、Kansas(カンサス)や Gary Moore(ゲイリー・ムーア)などのミックスを手掛けたこともあったJeff Glixman(ジェフ・グリックスマン)が参加し、レコーディングが進んでいきます。
しかし、思ったように進展しないと感じたバンドは、デモを作った後、いったんあえなく解散してしまいました。
ところが、マネージャーのKevin Jenningsはあきらめずに、そのデモをイギリスの小さなレーベルに持ち込みます。
そのデモを気に入ったレーベルは、1985年に Keep the Faithというタイトルで6曲入りのEPを制作しました。
業界でのそのEPへの評価はとてもポジティヴなもので、本国アメリカでもう一度バンドを再結成する動きが始まります。
その時にはダンとリックはそれぞれのバンドでの活動を行なっていましたが、ベースのRick Price(リック・プライス)、ドラムスのMauro Magellan(マウロ・マジェラン)を加えての4人での活動を再開します。
今度は本国アメリカでも注目され、再びジェフ・グリックスマンのプロデュースを受け、ついにエレクトラレコードからアルバムをリリースすることになりました。
では、今日は1986年リリースの、THE GEORGIA SATELLITES(ジョージア・サテライツ)のデビューアルバム、GEORGIA SATELLITES(ジョージア・サテライツ)をご紹介したいと思います。
GEORGIA SATELLITES(ジョージア・サテライツ)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、KEEP YOUR HANDS TO YOURSELF(キープ・ユア・ハンズ)。
これこそ、僕が初めて接した彼等の音楽です。
まったく80年代も後半に差し掛かったタイミングで出てくる新曲とは思えませんでしたね。
サウンド、構成ともに、一昔前のものとしか思えませんでした。
しかし、80年代に洋楽に目覚めた僕にとっては、それは逆に非常に新鮮で、あっと言う間にドはまりしてしまいました。
ロックンロールの基本形とも言えるギターリフと、どっしりしたドラムサウンド、ごりごりとうねるベース音、まさに南部ロックそのものです。
その泥臭い演奏に乗って歌われる、ダンの脱力系ヴォーカル。
ギターソロも、時代に合わせたハイテクなものは全くなく、昔ながらの基本的なロックンロールスタイルのプレイです。
こんな、時代錯誤とも思える楽曲が、エイティーズのキラキラした楽曲であふれるチャートを駆け上っていったのは、まさに驚きでした。
別に時代が求めた音ではなく、むしろ昔の流行のリヴァイヴァルといった風情でしたが、大きな支持を集めていきました。
やはり、この辺がいつも思うのですが、アメリカの音楽シーンのふところの深さといったところなんでしょう。
聴けば聴くほど、楽しい雰囲気を味わえる、まさに音楽の基本に立ち返ったようなサウンドです。
ある意味、時代を超越した名曲と僕は思いますね。
古くて新しい、極上の泥臭いロックンロールですね。
この曲はデビューシングルとしてリリースされ、何とビルボード誌シングルチャートで第2位、同誌Mainstream Rockチャートでも第2位を記録しています。
ちなみに、シングルチャートでNo.1になるのを阻んだのは、絶賛大ブレイクバカ売れ中のBon Jovi(ボン・ジョヴィ)のLivin’ on a Prayer(リヴィン・オン・ア・プレイヤー)でした。
タイミングさえ合えば、全米チャートを制したのではないか、と思える驚くべきチャートアクションでした。
2曲目は、RAILROAD STEEL(レイルロード・スティール)。
こちらはさらにスピードを上げた、ノリノリのロックンロールになっています。
これもリードギターが、リフ、ソロ共に非常にかっこいいですね。
キレがあって、時にねちっこく弾きまくってます。
バンドの一体感もあり、爽快な出来になってます。
ギター2本とベースとドラムというシンプルな構成で、こんなにかっこいいサウンドが出来るんだ、と改めて感心します。
この曲は3rdシングルとしてカットされ、Mainstream Rockチャートで第34位を記録しています。
3曲目は、BATTLESHIP CHAINS(バトルシップ・チェインズ)。
これまたキャッチーで楽しめるロックンロールです。
この曲は、Terry Anderson(テリー・アンダーソン)という人の作った曲で、彼のバンドThe Woodsの楽曲のカヴァーソングとなっています。
オリジナルは、シンセが全編に漂う中での、軽いポップソングとなっています。
それをジョージア・サテライツがカヴァーすると、なんとも骨太でポップ&キャッチーな楽曲に変貌を遂げました。
豪快なスネアドラムの音が、まったく雰囲気を激変させています。
また、イントロもツインギターのシンプルなリフになり、彼等のバンドサウンド全開になっていきます。
特にこの曲は歌メロが明るくキャッチーで、気持ちよく聴いてられます。
その辺はオリジナルと似てますが、こっちの方がはるかにワイルドで豪快です。
歌メロのハモリも、とっても心地よいです。
骨太なのに、キャッチーでポップという、なかなかおいしいとこ取りの佳曲だと思います。
オリジナルを吸収して、見事に彼等独特のものとして生まれ変わらせました。
この曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャート第86位、Mainstream Rockチャートで第11位を記録しています。
4曲目は、RED LIGHT(レッド・ライト)。
少しマイナー調で重々しいロックです。
バンドサウンドは変わりありませんが、ベースのうねりがとても効いていて、グルーヴ感満載です。
5曲目は、THE MYTH OF LOVE(ミス・オブ・ラヴ)。
イントロのギターストロークからかっこよいです。
この曲でも、ベースが動き回って、ついつい体が揺れる楽しい楽曲になってます。
楽器が少ない分、いろんな王道パターンを組み合わせたロックンロールを生み出しています。
6曲目は、CAN’T STAND THE PAIN(キャント・スタンド・ザ・ペイン)。
爽快な疾走系ロックンロールです。
サビが頭に持ってこられて、とにかく最大限の勢いが感じられる展開になっています。
スライドギターによるソロも、高速のバンドサウンドをバックにキマッテます。
シンプルではありますが、やっぱりノリがよく、楽しめる優れた楽曲ですね。
この曲は、作曲も担当したギタリストのリック・リチャーズがリードヴォーカルを担当しているようです。
7曲目は、GOLDEN LIGHT(ゴールデン・ライト)。
やっぱり、こんなスローで哀愁のあるロックもアルバム中には必要ですね。
2本のギターだけで、なんとなくキラキラな雰囲気をかもし出してるのがいいですね。
骨太アルバムの中での一服の清涼剤のような働きをしていると思います。
8曲目は、OVER AND OVER(オーバー・アンド・オーバー)。
演奏自体がシンプルなので、だんだん書くことがなくなっていきますw。
ツインギターリフにゴリゴリのベースと豪快なドラムがからむ、まあよい曲です。
ギターソロも、取り立てて派手でもハイテクでもありませんが、安定の上手さを持ってます。
アウトロでのヴォーカルとエレキの掛け合いが、とてもかっこいいです。
9曲目は、NIGHTS OF MYSTERY(ナイツ・オブ・ミステリー)。
1曲目のようにアコギのギターリフで始まって、後からバンドサウンドへ変化を遂げます。
ツインギターが非常に効果的に用いられてます。
間奏では、LチャンネルとRチャンネルで、2本のギターが掛け合ってますが、そこがとても印象的ですね。
いったん静かな夜の雰囲気になった後、再びドカドカと始まるバンドサウンドも彼ららしいです。
ラスト10曲目は、EVERY PICTURE TELLS A STORY(エブリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー)。
この曲はRod Stewart(ロッド・スチュワート)の3rdアルバムのタイトルトラックのカヴァー曲になっています。
軽快なサウンドの上で熱唱するロッドの曲とは対照的に、重厚なバンドサウンドの上に泥臭く歌い上げています。
まあオリジナルのメロディがいいからあとはアレンジ勝負とは思いますが、まあ完全にこの曲も自分たちのものに生まれ変わらせていますね。
ドカドカドラムサウンド、ゴリゴリベースのグルーヴ感、リフもソロもオーソドックスなプレイだけども心地よく聞かせてくれるエレキ。
そして、何よりも泥臭いヴォーカルとハモリ。
まさにこのシンプルな4人の音の集まりにより、名曲をさらに個性的にかっこよく世に生み出してくれたと思います。
まとめとおすすめポイント
1986年リリースの、THE GEORGIA SATELLITES(ジョージア・サテライツ)のデビューアルバム、GEORGIA SATELLITES(ジョージア・サテライツ)はビルボード誌アルバムチャートで第5位、アメリカで100万枚を売上げるヒット作となりました。
これは、驚きの大ヒットでしたね。
いったん解散に至った彼らでしたので、本人たちが1番驚いてたかもしれません。
新しいもの(機材、音、テクニック等)が次から次へ登場し、チャートを席捲していた時代に、昔ながらの典型的なロックンロールで勝負した彼らは逆に新鮮だったのかもですね。
マネージャーがあきらめずに動いたおかげで、埋もれてしまったバンドたちの一つに数えられることなくチャンスを掴むことができました。
とはいえ、レコーディング技術は発展した時代だったので、古いからと言って音がチープというわけではありません。
怒涛のサザンロックが、気持ちいい塩梅に封じ込まれています。
古いのに新しい、といった感覚が斬新だった気がしてます。
4人編成のバンドで、楽器はギター2本、ベース、ドラムスの基本的なもののみ。
短くコンパクトにまとめられた楽曲が次から次へと展開していきます。
そこに何のギミックも飛び道具もありません。
アルバムは10曲で38分、あっという間に駆け抜けていきます。
まさに、複雑化した音楽シーンに、シンプルの素晴らしさを焼き付けたのではないでしょうか。
とにかく、一気に楽しめる痛快怒涛の南部ロックンロール、これは確かに80年代に逆の意味できらめいていたと思います。
今でも十分楽しめる、時代錯誤(ある意味、時代超越)のアメリカンロックンロールアルバム、これはおすすめしたいですね。
チャート、セールス資料
1986年リリース
アーティスト:THE GEORGIA SATELLITES(ジョージア・サテライツ)
1stアルバム、GEORGIA SATELLITES(ジョージア・サテライツ)
ビルボード誌アルバムチャート第5位 アメリカで100万枚のセールス
1stシングル KEEP YOUR HANDS TO YOURSELF(キープ・ユア・ハンズ) ビルボード誌シングルチャート第2位、同誌Mainstream Rockチャート第2位
2ndシングル BATTLESHIP CHAINS(バトルシップ・チェインズ) シングルチャート第86位、Mainstream Rockチャート第11位
3rdシングル RAILROAD STEEL(レイルロード・スティール) Mainstream Rockチャート第34位
いつも楽しみに拝見してます。
おお!懐かしいですね!
書かれているとおり、当時Bon Jovi等のHR勢が台頭している最中の典型的ロックンロール、新鮮でしたね。
ただ……確かに良くも悪くも各曲のコメントのネタは無くなっていきますね(笑)注:褒め言葉です!
彼らのようなサウンドがミリオンセラーを記録した辺りにアメリカの音楽マーケットの多様性を垣間見れますね。
みちさん、こんにちは。
いやいや、逆に新鮮でしたよね、このバンド。
時代に逆行してたのに、見事なヒット。
僕自身が、80年代に洋楽デビューだったものだから、非常に斬新に感じました。
コメントの件、まさにそのとおりですw
僕はいつもアメリカ市場のふところの深さ、と言ったりしてますが、まさに多様性という言葉でもぴったり表わせますね。
いつもコメントありがとうございます。