ロックンロールアルバムの模範的名作 BRYAN ADAMS - RECKLESS(レックレス)
BRYAN ADAMS(ブライアン・アダムス)との出会い
1984年、一曲の超絶にかっこいいロックソングがチャートを上がってきました。
もう、イントロのギターアルペジオから悶絶しそうなかっこよさ。
そして歌声はハスキーで力強いヴォーカル。
サビも非常にキャッチーで、一発で気に入ってしまいました。
そのアーティストはBRYAN ADAMS(ブライアン・アダムス)、楽曲はRUN TO YOU(ラン・トゥ・ユー)です。
カナダ人の青年ロッカーの4thアルバムからの先行シングルでした。
この後、SOMEBODY(サムバディ)、HEAVEN(ヘヴン)といったシングルが続々と大ヒット。
それで、このアルバムをカセットに収めることになりました。
BRYAN ADAMS(ブライアン・アダムス)とは
カナダ人のブライアンは、10代の中ごろからナイトクラブに出入りし、そこで早くも、後に彼の片腕としてずっと仕事を共にするギタリスト、Keith Scott(キース・スコット)と出会っています。
15才の時には、バンクーバーのグラムロックバンド、Sweeney Toddの前ヴォーカルの代わりとして一時的にヴォーカルを担当します。
このバンドで一枚アルバムを制作しますが、そこで彼はすでに数曲で楽曲の共作者としてクレジットされています。
そして、このバンドはすぐに脱退し、17才の時にはバンクーバーのスタジオでバッキングヴォーカルなどで他のアーティストのプレイに参加したりしていました。
18才の時には楽器屋の共通の知人を通して、Jim Vallance(ジム・ヴァランス)と出会っています。
ジムは、後にブライアンと共に数多くの名曲を共作することになります。
ジムは、あるバンドのドラマーとして活動していましたが、ちょうどこの時、それを脱退してスタジオミュージシャン、およびソングライターとしての仕事に焦点を合わせていたときでした。
出会って三日後には、ジムのホームスタジオで合流し、そこで、今日(2016年時点は続行中)にいたるまでのパートナーシップが始まったのです。
こうして見ると、若い頃から、ブライアンは、ギタリストのキースやソングライターのジムなどと運命的な出会いを果たしていたことがわかりますね。
そして1978年の末にはA&M records と1ドルで契約を結んだそうです。
そこから彼のロックシンガーとしてのキャリアが始まります。
1980年、デビューアルバム Bryan Adams(邦題:ギヴ・ミー・ユア・ラヴ)は母国カナダで第69位を記録。
1981年、2ndアルバム You Want It You Got It(邦題:ジェラシー)は母国カナダで第50位、そしてアメリカで初のチャートインで、第118位。
1983年、3rdアルバム Cuts Like a Knife(カッツ・ライク・ア・ナイフ)はカナダで第8位、アメリカで第8位、アメリカで100万枚の初のミリオンセールスを達成します。
このように上り調子のときに僕はブライアンに出会いました。
そして次のアルバムで彼は頂点を極めることになったのです。
では今日は1984年リリースの、BRYAN ADAMS(ブライアン・アダムス)の4thアルバム、RECKLESS(レックレス)をご紹介します。
RECKLESS(レックレス)の楽曲紹介
オープニングを飾るのは、ONE NIGHT LOVE AFFAIR(ワン・ナイト・ラヴ・アフェアー)。
もう、イントロから爽快なロックンロールです。
ロックアルバムの幕開けには最高にかっこいいスタートですね。
キース・スコットのソリッドでシンプルなギターリフに、力強いドラムがもう絶妙のテンポで刻まれます。
そして、やはりブライアンのハスキーな声が、ロックンローラーらしいワイルドなヴォーカルを聞かせてくれます。
もう、展開もシンプルでまさに良質なロックンロールの模範的な作りになっていると思います。
そして、シンセが全盛になっていく時代にあって、最小限のロックバンドのサウンドで勝負しているところがとっても潔く好感がもてますね。
そしてキースのメロディアスなソロが、間奏ソロパートとアウトロで聴けます。
特にアウトロでブライアンのヴォーカルと絡みながらのプレイは一聴の価値あるナイスなプレイになっています。
ブライアンはカナダ人ですが、ほぼほぼアメリカンロックと同等のサウンドを披露してくれていると思います。
この曲は、アルバムからの5thシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第13位、同誌Mainstream Rockチャートで第7位を記録しています。
2曲目は、SHE’S ONLY HAPPY WHEN SHE’S DANCIN’(いかしたダンシン・ガール)。
これも軽快でノリのいいロックンロールです。
イントロからいかにもロックンロールなギターリフが曲を引っ張ります。
全体でギタリストのキースがいい仕事をしています。
ギターリフも、途中にちょいちょい入ってくるオブリも、そして当然ソロも存在感のある、かっこいいロックギターを披露しています。
また、この曲も前曲同様、キャッチーな歌メロで、それに絡むコーラスも絶品です。
シングルにはなっていませんが、負けないクオリティのあるロックソングだと思います。
3曲目は、RUN TO YOU(ラン・トゥ・ユー)。
まさに、僕が初めてブライアンと出会った楽曲です。
イントロから、ぐっとリスナーの心をつかんできますね。
空間系のエフェクターをかましたギターアルペジオに、ドラムのリムショットによるシンプルなリズム。
そこにスネアドラムが一発入って、ギターのスローなソロメロディとベースラインが入ってきます。
もう、歌メロに入る前で、完成度が高すぎて、くらくら来そうな素晴らしいイントロではないでしょうか。
そして、ブライアンの哀愁あるハスキーヴォイスが、シンプルな伴奏に乗せて歌い上げていきます。
そして、サビ前からしっかりしたバンドサウンドに変わり、キャッチーなサビへ。
熱く歌い上げるブライアンの歌唱にもゾクゾクします。
間奏のギターソロでは、シンプルなメロディをなぞりますが、ディレイもたっぷりですし、後半ではもう一本ギターが加わって二本でハモっています。
そして、伴奏が止まり、ギターのクリーントーンのカッティングが。
もう、たまらなくかっこいいです。
そして再び熱くブライアンがサビを歌い上げてエンディングになります。
もう、こんなかっこいい曲はなかなかないのではないでしょうか。
彼のハスキーなヴォーカル、バックの演奏、曲展開、どれをとっても一級品に思えましたね。
80年代を代表する楽曲の一つと認定して差し支えないでしょう。
この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャートで第6位を記録しています。
またMainstream Rockチャートで4週連続No.1を獲得していますし、さらに続けて5週連続で第2位を記録しています。(ちなみにその時のNo.1はDon Henleyの The Boys of Summerでした。)
4曲目は、HEAVEN(ヘヴン)。
これまた名曲きてます。
緊張感のある名曲ラン・トゥ・ユーに続いて、今度は一転非常に柔らかいメロディアスパワーバラードです。
この流れは絶妙ですね。
この名曲が誕生したのは1983年のツアー中のことです。
ブライアンと一行は、JOURNEY(ジャーニー)のFRONTIERS TOURのオープニングアクトとして3ヶ月以上ジャーニーとライヴツアーを行なっています。
そのツアー中に、ブライアンと、ジム・ヴァランスは、FAITHFULLY(時への誓い)にインスパイアされて、この曲を書き上げたそうです。
いや、名曲からさらに名曲が生まれた瞬間ですね。
そして、レコーディングセッションのスケジュールが遅れたために、ドラマーのMickey Curry(ミッキー・カリー)がホール&オーツのセッションのために一時的に離れることになります。
それで、たまたま近くに居合わせた、ジャーニーのドラマー、 Steve Smith(スティーヴ・スミス)を呼び寄せて、彼のプレイで無事レコーディングされました。
当初、この曲は映画、 A Night in Heaven(ナイト・イン・ヘヴン)のサウンドトラックに収録されます。
そしてニューアルバム制作の際、最初はブライアンはこの曲がこのアルバム、レックレスに合うかどうか確信が持てなかったようです。
というのも、その時一緒に仕事をしていた Jimmy Iovine(ジミー・アイオヴィン)が、この曲は、次のアルバムにはちょっと軽すぎるので、その中に入れないように勧めていたからです。
しかし、最後の最後にブライアンの気が変わり、レックレスに収録されることになりました。
これは英断だったですね。
この曲なしでもアルバムは大ヒットとなったとは思いますが、この曲のヒットがアルバムのセールスを押し上げたのは間違いないですし、何と言っても初のポップチャートNo.1シングルとしてアルバムに華を添えたわけですからね。
ブライアンの直感が当たったというわけです。
キーボードの優しい伴奏と途中からのバンドサウンドの融合でとても美しいパワーバラードになっていますね。
FAITHFULLYに影響を受けたというだけあって、素晴らしいメロディアスな楽曲です。
キースのメロディアスなギターソロも効いています。
この美しいバラードは3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで2週連続No.1、Mainstream Rockチャートで第27位、Adult Contemporaryチャートで第12位を記録しました。
ちなみに、映画のサントラとしてリリースされたときには、Mainstream Rockチャートで第9位を獲得していました。
A面ラストの5曲目は、SOMEBODY(サムバディ)。
この曲は、ちょっと聴くとバラードのようにも聞こえます。
しかし、テンポはゆったりですが、堂々の王道ロックでもあります。
この曲の最大の特徴はサビのパートと言えるでしょう。
初めて聴いた人でも、2番からはきっと一緒にシンガロングできる、キャッチーなサビメロ。
非常に耳に残る素晴らしいメロディを生み出しましたね。
ライヴで、共に歌えば必ず盛り上がる、キラーチューンとも言えそうです。
この曲はアルバムからの2ndシングルとしてカットされ、シングルチャート第11位、Mainstream Rockチャートでは2週連続No.1を記録しています。
B面1曲目は、SUMMER OF ’69(想い出のサマー)。
ギターリフのイントロからわくわくします。
もともとこの曲のタイトルは、歌詞の中で繰り返されるBest Days of My Lifeだったそうですが、最終的にはこのタイトルに変えられています。
やはり、この曲の一番の魅力はサビでのノスタルジックなメロディではないでしょうか。
聴くだけで、なんか懐かしい気持ちにさせてくれる素敵なメロディです。
途中からはコーラスも入って美しいサビになっています。
この曲はアルバムからの4thシングルとしてカットされ、シングルチャートで第5位、Mainstream Rockチャートでは第40位を記録しています。
2曲目は、KIDS WANNA ROCK(キッズ・ワナ・ロック)。
アルバム中もっともハードなロックンロールです。
キースのロックンロールギターが冴えまくってます。
それにワイルドでハスキーなブライアンのヴォーカル。
非常にキャッチーでノリノリの楽曲になっていますね。
2分半ほどの短い曲ですが、ロックンロールの楽しさが凝縮されたとても素敵な楽曲だと思います。
3曲目は、IT’S ONLY LOVE(イッツ・オンリー・ラヴ)。
ここでなんと Tina Turner(ティナ・ターナー)とのデュエット曲です。
僕はティナの、What’s Love Got to Do with It(愛の魔力)なんかがとても好きでしたが、当時このブライアンとの組み合わせには驚かされました。
彼女がパワフルな女性ヴォーカリストというのはわかってましたが、王道ロックンロールのブライアンとのデュエットがどんなになるか見当が付かなかったのです。
しかし、何ともかっこいいロックソングが出来上がりましたね。
いつものようにブライアンのリズムギターとキースのリードギターによりかっこいいロックソングになっています。
そして、そこに入ってきたティナのヴォーカル。
とてもパワフルで、相性はばっちりでしたね。
PVでも二人とも、何とも楽しそうにデュエットしておられます。
ブライアンは10代後半から20代前半にかけて、クラブで歌うティナを何度も見に行っていたようです。
その憧れのシンガーと共に歌えるのを栄誉であり、素晴らしい体験だったと語っています。
1950年代半ばからミュージシャンとして活動している大ベテランと、若さあふれるブライアン。
20歳ほどの年の差を感じさせない素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。
この曲はアルバムからの6thシングルとしてカットされ、シングルチャートで第15位、Mainstream Rockチャートでは第7位を記録しています。
4曲目は、LONG GONE(ロング・ゴーン)。
この曲も、ギターリフが非常にかっこよくきまっていますね。
ブルージーな横ノリの心地よいロックンロールです。
ギターソロに続くブルースハープもいい味出しています。
アルバムラストは、AIN’T GONNA CRY(涙をふきとばせ)。
最後も、アップテンポなロックンロールです。
やはり、ブライアンの最大の売りは、このはじける若さではないでしょうか。
後に18 til I Die(死ぬまで18歳の意味)というアルバムを出しますが、まさに、このころはリアルで若かった頃ですからね。
若さ真っ盛りの頃らしい楽曲ですね。
最後はなんかが崩壊したかのようなシャウト。
最後まで勢いよく駆け抜けてくれました。
まとめとおすすめポイント
1984年リリースの、BRYAN ADAMS(ブライアン・アダムス)の4thアルバム、RECKLESS(レックレス)はビルボード誌アルバムチャートでNo.1に輝き、アメリカだけで500万枚を売り上げる大ヒットアルバムとなりました。
ちなみに世界では1200万枚を売り上げたようです。
また、1984年のアルバム年間チャートで第2位となっています。(ちなみに1位はBruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)のBORN IN THE U.S.A.(ボーン・イン・ザ・U.S.A.)です。)
もう、この大ヒットの要因の一つは、キャッチーで勢いのあるブライアンの魅力全開のアルバムとなっていることがあげられるでしょう。
若さあふれるルックスと、ロックンローラーにピッタリのハスキーヴォイス。
まずは、ここに多くの人はやられたのでしょう。
そして、良曲が詰まっている、というのも重要です。
このアルバムからは6曲ものシングルヒットを出してますし、残りの楽曲も非常にクオリティの高いロックンロールになっています。
全10曲ともに、ブライアンとジム・ヴァランスの共作となっています。
二人の才能が、まさに開花したアルバムと言えるでしょう。
キャッチー&メロディアスなロックンロール。
これは、もはや嫌いになる要素はないのではないでしょうか。
また、このアルバムはBob Clearmountain(ボブ・クリアマウンテン)によるプロデュースになっています。
彼は数多くの作品を手掛けており、一流のミキサー、エンジニアと言われています。
特にラン・トゥ・ユーで聞ける、あの、スリリングな展開や、音の響きの一つ一つがかっこよく聞こえるのは彼の手腕に違いありません。
ボブは同年のボーン・イン・ザ・U.S.A.ではミキシングを担当しており、まさに、当時の流行の楽曲を生み出していたのですね。
彼のプロデュースで、レックレスが輝きを増したとも言えるでしょう。
また、ブライアンのバックに控えるバンドは、ほぼ固定でずっと来ているようですが、その中でもギタリストのキース・スコットの役割も非常に大きいと思います。
アルバム全般にわたって、ギターのリフもソロも非常にかっこいい出来になっています。
ブライアンはリズムギターがメインですのでそれ以外はほぼキースのプレイと思われます。
ウィキぺディアによると、
エドワード・ヴァン・ヘイレンは、かつて雑誌のインタビューで「今好きなギタリストは?」との質問に対し「キース・スコットだ。彼はとてもメロディアスだからね」と回答していた。
とあります。
天才が認めるギタリスト、キース・スコット。
もちろん、エディのように速弾きだったり、タッピングだったりと最先端の技を駆使するわけではありませんが、キースのプレイには味があると思いますね。
やはり楽曲にピタリとはまる、絶妙なリフだったりソロをプレイする点で、いぶし銀の才能を持っていると思いますね。
ロックアルバムにはやはり、ヴォーカルだけでなく優れたエレキギターが必要不可欠です。
その点でも、このアルバムレックレスはロックアルバムとして、見事な完成形を示していると感じられます。
80年代ど真ん中ですが、キラキラしたシンセはほぼ聞かれません。
ここで聴けるのは、ストレートな若さあふれるロックンロールです。
80年代を代表するロックアルバムの一つ、レックレスは万人におすすめできる優れたアルバムだと僕は思っています。
チャート、セールス資料
1984年リリース
アーティスト:BRYAN ADAMS(ブライアン・アダムス)
4thアルバム、RECKLESS(レックレス)
ビルボード誌アルバムチャートNo.1 アメリカで500万枚 世界で1200万枚のセールス
年間アルバムチャート第2位
1stシングル RUN TO YOU(ラン・トゥ・ユー) ビルボード誌シングルチャート第6位、同誌Mainstream Rockチャート4週連続No.1
2ndシングル SOMEBODY(サムバディ) シングルチャート第11位、Mainstream Rockチャート2週連続No.1
3rdシングル HEAVEN(ヘヴン) シングルチャート2週連続No.1、Mainstream Rockチャート第27位、Adult Contemporaryチャート第12位
4thシングル SUMMER OF ’69(想い出のサマー) シングルチャート第5位、Mainstream Rockチャート第40位
5thシングル ONE NIGHT LOVE AFFAIR(ワン・ナイト・ラヴ・アフェアー) シングルチャート第13位、Mainstream Rockチャート第7位
6thシングル IT’S ONLY LOVE(イッツ・オンリー・ラヴ) シングルチャート第15位、Mainstream Rockチャート第7位