80’sサウンドの玉手箱  THE CARS ー HEARTBEAT CITY

THE CARSとMTV





80年代洋楽と言えば、MTVとのかかわりを無視するわけにはいきません。

 

数多くのアーティストが、優れたPVを製作し、それがMTVでヘヴィローテーションされると、その曲は大ヒットする、というヒット曲の法則が存在しました。
このTHE CARS(カーズ)もまさにその流れにのっかり一世を風靡した、と言えるでしょう。

 

とは言え、彼らはポッと出のアーティストではありません。
ボストン出身の彼らは、同じ市出身のBOSTON(ボストン)と同じ年、1976年にデビューしています。
デビュー当時から評価は高く、ヒット作を出し続けていましたが、MTV開局と共に、一躍世界的バンドへと躍進することになりました。

 

ちょうど、僕がこのバンドを知ったのはそのタイミングです。
1984年、アルバムの先行シングルとして、YOU MIGHT THINK(ユー・マイト・シンク)発表。

そして、なんとこのPVはMTVの第一回MTV VIDEO MUSIC AWARDSで1984年の最優秀ビデオ賞を獲得したのです。
その年はマイケル・ジャクソンのスリラーや、ポリスの見つめていたい、などの強豪がノミネートされていたのに、それらを抑えての堂々の受賞でした。

 

まさにMTV時代の幕開けにふさわしい楽曲を作り上げて見せたのです。
そしてPVは確かにその目的を果たし、楽曲のプロモーションに大きな貢献をしました。

 

というわけで、今日は1984年リリースの、THE CARS(カーズ)の5thアルバム、HEARTBEAT CITY(ハートビート・シティ)をご紹介します。

HEARTBEAT CITY(ハートビート・シティ)楽曲紹介

オープニングを飾るのは、HELLO AGAIN(ハロー・アゲイン)。

 

アルバムの1曲目は絶妙なポップソングです。
もう、時代の最先端を行ってたんではないかと思われる、様々な音色で彩られるカラフルな楽曲です。
ポップな楽曲なのに、抑え気味で歌うRic Ocasek(リック・オケイセック)のヴォーカルが秀逸です。
非常に軽快で、とってもシングル向けのキャッチーな楽曲になってます。

 

PVは当時のミュージックシーンで問題になっていた性と暴力についての論争が取り上げられています。
Andy Warhol(アンディ・ウォーホル)が監督したようですが、ちょっと見るに耐えないシーンがあるので、話題作りには成功したのかもしれませんが、曲にあったPVとは思えないのが残念でした。

 

でも楽曲そのものはスタイリッシュでキャッチーな良い曲です。

 

この曲はアルバムからの4thシングルとしてカットされ、ビルボード誌シングルチャートで第20位、同誌Mainstream Rockチャートで第22位、同誌Dance Club Songsチャートで第8位を記録しています。

 

2曲目は、LOOKING FOR LOVE(ルッキン・フォー・ラヴ)。

 

この曲もとてもポップな出来になっています。
この曲でもアレンジがキラキラ輝いてます。
ゆったりスタートから、途中からテンポアップしますが、全体としてとても優れた楽曲になっています。
キラキラかわいいアレンジの楽曲に乗る、リックの独特の声が絶妙にマッチしてます。

 

3曲目は、MAGIC(マジック)。

 

これも素晴らしく良く出来たポップソングです。
シンセがキラキラ彩っている合間で、存在感のあるシンプルなエレキギターのリフがかっこよく楽曲を貫いてます。
サビ前ではエレキのアルペジオが美しく奏でられます。
そして、ギターソロもちゃっかり準備されてます。
こうして、シンセポップがフィーチャーされてはいますが、しっかりバンドである主張もなされているように聴こえます。
非常にサビもキャッチーで、かなりハイレベルなポップソングです。

 

PVでは、ヴォーカルのリック・オケイセックがプールで水面を歩くと言うマジックを見せてくれています。(種明かしはアクリル樹脂を水中に置いてその上を歩いたということらしい。)

 

絶妙なポップソングで、リックの独特のヴォーカルがなぜかキラキラシンセサウンドにマッチするという、カーズマジックを見せてくれました。

 

この曲は2ndシングルとしてカットされ、シングルチャート第12位、Mainstream RockチャートでNo.1を獲得しました。

 

4曲目はDRIVE(ドライヴ・ユー・ホーム)。

 

これは僕の中で80年代洋楽を代表する名バラードの一つとして数えられます。
ヴォーカルは、ベーシストのBenjamin Orr(ベンジャミン・オール)。
リックの独特なヴォーカルとは対照的に、オーソドックスで甘いヴォーカルを聴かせてくれます。

 

ゆったりとしたメロディで、最高のひと時を過ごさせてくれます。
非常に気持ちいいサウンド、メロディ、ヴォーカル、まさに究極のバラードですね。

 

この曲はアルバムから3rdシングルとしてカットされ、シングルチャートで第3位、Mainstream Rockチャートで第9位、Adult ContemporaryチャートでNo.1を獲得しています。

 

ちなみにリックはPVに出ていたモデルの女性と後に結婚したそうです。役得・・。

 

5曲目は、STRANGER EYES(ストレンジャー・アイズ)。

 

ちょっとスリリングなタッチのロックよりのポップスです。
きれいなコーラスと、数々のシンセが楽曲を彩り、しっかりと80年代サウンドに溶け込んでます。
名曲に挟まれ目立ちませんが、悪くはありません。
ベンジャミンがメインヴォーカルです。

 

6曲目はYOU MIGHT THINK(ユー・マイト・シンク)。

 

80年代を代表する良質のポップロックです。
キラキラしたサウンドの中で聴けるエレキギターのリフがソリッドで、とてもかっこいいですね。
ギターソロでも、軽快なカッティングをきめて、楽曲に見事にはまったメロディを披露してます。

 

この曲はおもしろいPVが話題になり、全米チャート7位にまであがって行きました。
WIKIによると、この曲はCG(コンピューターグラフィック)が使われた初期のPVの一つと解説されています。
でも今見ると、非常にCG的にはお粗末な映像に見えます。
しかし、当時はその中でメンバーが変幻自在に現れる様子に目を奪われたものでした。
アイディア満載でとても楽しいつくりになっています。
お遊び満点の映像ですが、今となってはそのアナログ感が懐かしくもあり、味があると感じられますね。
そして上記のとおり、MTVの第一回MTV VIDEO MUSIC AWARDSで1984年の最優秀ビデオ賞を獲得しました。

 

この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされ、シングルチャート第7位、Mainstream RockチャートでNo.1を獲得しました。

 

7曲目は、IT’S NOT THE NIGHT(イッツ・ナット・ザ・ナイト)。

 

シンセ先行の不思議な雰囲気の始まりですが、途中でソリッドなギターリフが切り込んでからちょっとポップに展開します。
ちょっと目立たない楽曲でもあります。
ベンジャミンがヴォーカルをとってます。

 

8曲目はWHY CAN’T I HAVE YOU(ホワイ・キャント・アイ・ハヴ・ユー)。

 

しっとりバラードです。
リックが切なく歌い上げています。
地味ですが、よくよく聴くと味わい深い楽曲であることに気づけます。

 

この曲はアルバムからの5thシングルとしてカットされ、シングルチャート第33位、Mainstream Rockチャートで第11位を記録しています。

 

9曲目はI REFUSE(アイ・リフューズ)。

 

軽快なポップソングです。
カーズらしいサウンドで、安定の聴き心地です。

 

アルバムラスト10曲目はHEARTBEAT CITY(ハートビート・シティ)。

 

タイトルソングともなっているこの曲は、最後までエイティーズ感全開の良質のポップソングになっています。

まとめとおすすめポイント

1984年リリースの、THE CARS(カーズ)の5thアルバム、HEARTBEAT CITY(ハートビート・シティ)はビルボード誌アルバムチャート第3位を記録、アメリカで400万枚を売り上げました。

 

キラキラ輝くような玉手箱のようなこのアルバムには、80年代サウンドがぎっしり詰め込まれています。
とりわけポップでメロディアスな楽曲が多いのは、まずは作曲のセンスがいいのでしょう。
ほとんどの曲をリック・オケイセックが作曲しています。
彼のコンポーザーとしての能力がこのアルバムを優れたものにしている要因にまず挙げられます。

 

それに加えて、リックのあのヴォーカルスタイルも同じように言えるのではないでしょうか。
ヴォーカルが個性的、リックのあのくぐもった声がポップソングにマッチするとは思いにくいのですが、それがそれがマッチするのです。
これはスティーヴィー・ニックスのヴォーカルとも相通じるものがあると言えるかもしれません。
それにリックの風貌も個性的です。
日本のシーナ&ロケッツの鮎川誠のようで、今にも九州弁をしゃべり出しそうです。

 

また、あの名曲ドライヴ・ユー・ホームと他2曲はベーシストのベンジャミン・オールがメインヴォーカルを取っていますが、それによって大きくカーズサウンドを逸脱することはありません
ドライヴ・ユー・ホームに関しては、彼のヴォーカルで良かった、と思えるほどフィットしていると言えるでしょうね。

 

加えて、今作はカーズメンバーとRobert John “Mutt” Lange(ロバート・ジョン“マット”ランジ)の共同プロデュースになっています。
マット・ランジと言えば、DEF LEPPARDの多くの作品、AC/DCFOREIGNERなど、どちらかというとハード系のロックに携わってきた人です。
でもカーズのポップなロックテイストを失わず、むしろ昇華させたのは、メンバーとの共同プロデュースの結果だと言えるかもしれません。

 

アレンジはいろんな手法で80年代らしく装飾されていますが、その底辺にちゃんとバンドサウンドがあるところに実はマット・ランジの手腕が光っているのかもしれませんね。

 

やはり、80年代のきらきら感を楽しむには絶好のアルバムだと思います。

 

ポップなアレンジとバンド感の絶妙なバランスを楽しめるこのアルバムは一聴の価値ありです。

 

最後になりますが、このバンドの名前、「THE CARS」って、日本だったら、「自動車」ってバンド名になるんですよね。
全員が車好きだからってこのバンド名にしたらしいけど、日本ではありえないですね。
でも英語になると、「THE CARS」って何かクールに感じてしまいます。

 

やはり英語はかっこいい。

チャート、セールス資料

1984年リリース

アーティスト:THE CARS(カーズ)

5thアルバム、HEARTBEAT CITY(ハートビート・シティ)

ビルボード誌アルバムチャート第3位 アメリカで400万枚のセールス

1stシングル YOU MIGHT THINK(ユー・マイト・シンク) ビルボード誌シングルチャート第7位、同誌Mainstream RockチャートNo.1

2ndシングル MAGIC(マジック) シングルチャート第12位、Mainstream RockチャートでNo.1

3rdシングル DRIVE(ドライヴ・ユー・ホーム) シングルチャート第3位、Mainstream Rockチャート第9位、Adult ContemporaryチャートNo.1

4thシングル HELLO AGAIN(ハロー・アゲイン) シングルチャート第20位、Mainstream Rockチャート第22位、Dance Club Songsチャート第8位

5thシングル WHY CAN’T I HAVE YOU(ホワイ・キャント・アイ・ハヴ・ユー) シングルチャート第33位、Mainstream Rockチャート第11位

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